茨城キリスト教大学

産学連携「あんこう、宇宙へ。宇宙食プロジェクト」メンバーを取材しました!

産学連携「あんこう、宇宙へ。宇宙食プロジェクト」に取り組む
㈱まるみつ旅館と食物健康科学科を取材しました。

今回取材に応じてくれたのは、㈱まるみつ旅館代表取締役の武子能久(たけし よしひさ)社長、本学食物健康科学科の大貫和恵准教授と4名のゼミ生。
今年のあんこうサミットに向けた商品開発を手掛けました。

左から)武子代表、大貫ゼミ生4名、大貫准教授

これが、あんこうから抽出した肝油!

見た目にインパクトがあり、そして、独特な深海魚のにおいがするあんこうですが、写真からもわかるとおり、肝油はとても綺麗なオレンジ色の液状でした。
あんこうの肝油には認知症予防やコレステロール値の低下が期待できるEPAやDHAが豊富に含まれているのだそうです。
これを摂取することで健康でいられたら・・・
このプロジェクトでは、この肝油を活用した加工品開発の研究をすすめ、様々な商品を製作しています。

今回、学生たちが考案したお菓子

シュークリーム

生地にあんこう肝油を練りこみ、ふっくらと焼き上げました。(写真はシュー皮のみ)
皮の中にはカスタードクリームを合わせます。生地にある材料を入れることで、あんこうの独特なにおいを最大限に消すことに成功し、カスタードクリームによって、肝油のにおいをまったく感じない商品が完成しました。

クッキー

生地にあんこう肝油を練りこんで焼き上げました。
肝油のにおいを感じない爽やかな風味と小麦アレルギーの方にも配慮したグルテンフリーのお菓子です。
サクっと軽く、年齢問わず好まれるクッキーとなっています。

商品を考案した学生の声

Q.みなさんは本プロジェクト(ゼミ活動)にどんな想いをもって参加していましたか。また、これまで商品開発に関わる活動をしたことがありましたか。

お菓子の試食と、出品へ向けて

Q.学生考案のお菓子を試食された感想はいかがでしたか?

武子代表 まず、クッキーから先に食べさせていただきました。
懸念していたにおいや味、特ににおいですね。あんこう特有のにおいが全く感じなかったし、味も美味しかった。
普通にもう、“このまま売れる商品”が出来上がっていて、すごく高い評価でした。 
 
シュークリームは、お菓子の種類としてハードルの高いものに挑戦してくれたと思うんですよね。
大貫先生からも、シュー生地の膨らみのところで苦労していることは伺っていました。「何℃で膨らんだのか、膨らまなかったのか」という調査内容もすごく大事な研究成果だったと思うし、“ここまでよく仕上げたな”と思ったほど、味も美味しく素晴らしい商品だったと思います。
研究結果と中身で見たら、シュークリームの方が評価は高いですね。 



 

Q.あんこうサミットで出品する商品はどちらにしましょうか?

武子代表 あくまでも今回選ぶのは、「サミットで販売する」という視点になります。
クッキーの製造工程や効率、しっかり焼ききることができるという衛生面・安全面の観点でクッキーの方を商品化したいと思いました。
繰り返しになりますけど、あんこう肝油を使用した製菓の開発としては、中身や成形の難しさなど、ハードルの高いところをクリアしてくれたと思っているので、シュークリームの評価は高かったです。
ただ、成形の成功率のことや、中身のクリームの安全性を加味して考えたとき、今回はクッキーが良いと思いました。

大貫先生もご納得いただいたあとで・・・(結果を待つ学生が来るまでの余談)
武子代表 アレルギー面のことを考えるのはやっぱり管理栄養士課程を学ぶ学生だなと思いましたね。
大貫先生 小麦粉と何か(米粉や大豆粉等)を組み合わせて作る製品は多いようですが、米粉100%で作るクッキーの論文は少ないようです。だからこそ、学生は挑戦してみようと動き出しました。


これまでを振り返って

Q.まるみつ旅館さんとの産学連携活動で、これまでに4つの商品が考案(公表)されました。プロジェクトを振り返っていかがですか?

武子代表 毎年、素晴らしい商品があがってきて、私のところでは思いつかなかった商品や発見があり(武子代表もまるみつ旅館で自ら商品開発に携わっています)、宇宙食開発に向けて一歩一歩確実に近づいていると実感しています。
今後はこれを加速して、この成果を十分生かしていきたいですね。

大貫先生 このプロジェクトを介して、私には考えられないものを学生が生み出してくれて、素敵な商品に出来上がったことが良かったと思っています。
これまでも数々の商品を作りだしてきましたが、学生が商品を作り上げ、最終の仕上げまで頑張ってくれたのでここまでの商品に仕上がったのかなと思います。
私はお菓子作りが専門ではないですし、お菓子を普段から食べないので、油(あんこう肝油)をつかってお菓子を作るという発想がまったくありませんでした。このプロジェクトを始めるときも本当に肝油を使ってお菓子が作れるのか・・・と、半信半疑でした。
ですが、学生のアイデアで肝油をつかったお菓子を考え、学生が作りたいものを形にしてきてくれるので、私自身も最初は驚きましたね。
 
 

Q.これまでの商品開発の過程の中でご苦労された点はありましたか?

武子代表 私の方は材料を提供する程度なので、苦労した点というのはほぼなかったです。
開発に取り組む学生や先生の方が肝油の強いにおいをどう消していくのかという課題をクリアするのに苦労していたのではないかと感じています。

大貫先生 まず、1年間の中で1つの商品を最初から最後まで作り上げるということはとても難しいことです。
時間的な制約などがある授業の中で商品開発を行っているのも大変なところですが、そこを学生が本当に根気強く、最後まで諦めずに取り組んでくれています。
実際、授業時間だけでは足らず、「おいしいものを作りたい」という想いで毎週のように残って研究、開発に勤しんでくれていた成果が、こうして素敵な商品に繋がったと思いますので、私よりも学生の方が本当に大変な苦労をしていたと思います。  
このあと学生も話すかもしれませんが、魚介類からとれた油は焼くと更ににおいが強くなります。作っているときにはにおわない生地が焼いた途端、オーブンの外までにおいがしてくるので、それを改善するために、においを消す材料選びから配合まで本当に根気強く研究してくれたと思います。
そして、商品開発のモットーのひとつに、「レシピを見たら誰でも作れる」ということも掲げていますので、においを消す材料(企業秘密)も含めて手に入りやすいものを学生が考えました。



Q.本プロジェクトを含め、商品開発のやりがいや面白さをお聞かせください。

武子代表 商品開発は、まずゴールを決めて、それに向かっていきます。そしてそれが出来上がった時、当初のゴールとはちょっとずれることもあるんですが、 それも一つの楽しみでもあります。今までにないものを作り上げることや、自分の考えたものが商品になる達成感もあるし、商品を組み合わせたら新しいものができあがることも面白い。
失敗も経験になるということかな。それをどんどん積み重ねていくのが楽しさであるし、失敗から成功ができたときも喜び。すごくやりがいがあると思っています。

大貫先生 思っていたこと全部、武子代表がお話しくださったので、別視点からお話しをしようと思います。
私の場合は、やっぱり学生の成長する姿を見られることが最大のやりがいですね。
このプロジェクトは、学生が作ったものに対して私も「こうした方がいい」とか、「これ、こうだね」とコメントをしながら試作を重ね、最終の製品として仕上がっていくのですが、そのコメント一つ一つを学生がきっちり受け止めて、次には改善したものが出来上がってきます。
これは多分、私しか分からないと思うのですが、商品開発を取り組んでいる中で学生の目つきが変わってくるんです。
「頑張るぞ」っていう。目の中にメラメラと炎が見えてきて、そういう心の変化を見ていると、教員としてすごくやりがいでもあるし、面白さもあると感じています。


Q.今後、本プロジェクト活動に期待されることは何ですか?また、宇宙食開発に向けてどのような活動をしてみたいですか?

武子代表 ゴールは宇宙食を作ると言っていますが、その過程の中でも色々な方との出会いがあると思いますし、大学や地域のPRにもつながると思います。茨城県のPRにもなるでしょう。
様々な人たちがこのプロジェクトに参加して最終ゴールに向けて進んでいく中に、また何か新しい種があるのかな、と思っています。
それが私自身の楽しみでもあります。

大貫先生 これまで数々の商品を作ってきましたが、もう少しクオリティを上げ、最終的に商品として販売できるようにしていきたいと思っています。
これは夢ですが、ふるさと納税の返礼品やサービスエリア、地元で販売できるようになるといったことがやれたらと願っています。
それで県北の地域がもっと盛り上がっていくことを期待したいです。



Q.そもそもですが・・・宇宙食開発へは長い道のりがあるように見えます。進捗はどうなのでしょう。

武子代表 宇宙食開発は、時代が味方し、プロジェクトを始めた頃より夢が近づいてきたと考えています。
宇宙飛行士さんの食事としては難しいのかもしれないけど、宇宙食にするのはそんなにハードルの高いものではないんじゃないかと思っています。
そのうえで、このプロジェクトは宇宙食開発というゴールを決めていますが、時間軸は決めていません。焦って進めようとしてもうまくいかないでしょうし、なかなか良い結果、良い評価が出なかったときのことも踏まえて、前準備を常に大事にしています。
ちょうど一昨年前の秋ごろに、『ゴジラ-1.0』(ゴジラ マイナスワン)という映画があったんですが、その当時、ゴジラ向けの商品などは作っていなくて、鍋にあんこうの顔を入れたあんこう鍋を作っていたんです。それがゴジラのイメージに繋がったというか、こちらに突然ゴジラとのコラボの話がきて、ものの10日ぐらいで「ゴジラ級あんこう鍋」が決まったんです。
そういうのを経験するとやっぱり前準備というのは常に必要で、いざ来たときに瞬発力で出せるんですよね。


大貫先生 これまで宇宙食開発ということで商品開発をしてきて、ネックとなっている肝油のにおいをどのようにして消すのかを考えながら作ってきました。まだまだやるべきことがたくさんあると思うので、そこを詰めて、5年ぐらいを目安にやっていけたらと思っています。
今回は、お菓子を中心に作りましたが、今後はお菓子ではないものにも挑戦して、いろんなタイプのものを作って引き出しを多く作っておきたいです。
会話の中で「こういう系がいいな」と企画が挙がった際に新たな商品をすぐに提供できるように、今後準備しておきたいと思っています。


 

ここからは学生にインタビュー

Q.今回の商品開発はどうでしたか?

最初はアイスを作る予定で、それに合うものとしてシュー皮とクッキーの開発に取り組んできました。
また、これら以外にはデニッシュアイスも検討しました。

シュークリームづくりで苦労した点は、あんこう肝油を入れると生地が全然膨らまなかったことです。
また、肝油のにおいも強く、これまでたくさん試作品を作ってきましたが、全くうまくいかなくて、予想外なことが多かったです。
さらに、これらの解決策も分からなくて、配合や作り方を一から見直し、様々な情報を調べて、何度も試作をしてきましたのですごく苦労しました。
でも、大変さの中にも楽しさがあって苦労した分、思い入れが強くなって、熱中して一生懸命頑張れました。

クッキーづくりで一番大変だったのは肝油のにおいを消すことです 。肝油は特有のにおいがあるので、においを消すために消臭効果がある材料を取り入れたり、肝油の量を調整したり、様々なことを試してみましたが、味とのバランスを取るのが難しかったです。
また、初めの頃はアレルギー除去の観点から、 小麦粉以外の粉として大豆粉やきな粉も使ってみましたが、クッキーがひび割れてしまったり、形がうまくいかなかったり、食感も悪くなってしまうなどの失敗が続いたので、材料や配合が決まるまでにとても苦労しました。


Q.1つの商品にどれくらい試作を重ねましたか?

12回はやりました。12回といっても、1日の中で複数回試作した日もありますし、夏と冬でも気温や湿度の影響で仕上がりが変わるので大変でした。


Q.活動開始はいつごろから?

卒業研究の一貫なので前期の4月からずっと続けてきました。
どのような商品を作るか、材料は何を使うかも含めて商品が完成するまで1年間かかりました。

Q. 商品化おめでとうございます。率直な感想をお聞かせください。

素直に嬉しいです!ぜひ召し上がってください!

(取材者もシュークリームとクッキーの両方を試食。美味しい!肝油のにおいがしっかり消えていて美味しくいただきました!) 

 

Q.どのような方に食べてもらいたいですか?

グルテンフリーを意識した商品を作りたいと思っていたので、小麦アレルギーのある方たちにも食べていただきたいです。


Q.プロジェクトに参加していかがでしたか?

プロジェクトの担当でありゼミの先生が大貫先生だからこそ、みんなついていきたいと思って活動しました。
まるみつ旅館の皆様の期待にも応えたいと思い、 メンバー全員で苦楽を共にして一生懸命取り組んできました。

今回商品化したのはクッキーですが、シュークリームづくりも精一杯やってきたので悔いなしです!(シュークリーム開発グループ)




Q.プロジェクトが今後どのように進んだらよいと考えますか?

Q.プロジェクトを通して得られたものはありますか?

インタビューは以上

みなさま、長時間にわたり取材へのご協力をありがとうございました!

 今年3月で卒業する学生の皆さんがこの経験を糧に、社会で活躍してくれることを期待しています。
3月8日(土)のあんこうサミットの成功もお祈りしています! 

地域・国際交流センター

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地域交流課では、学生ボランティアの他にも地域に貢献できる講習や講演会を企画しています。
地域社会との連携、地域活動のほかに、公開講座・県民大学など各種講座運営、聴講生に関すること、広報誌「みどりの」編集・発行、地域・教育ボランティアに関することを担当しています。

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