2017年、この春のよき日に、いよいよ茨城キリスト教大学、あるいは大学院で学びの一歩を踏み出す皆さん、ご入学おめでとうございます。ご同席のご家族・ご関係の皆様にも、茨城キリスト教大学を代表して、心よりお祝いと歓迎のご挨拶を申し上げます。また、ご来賓の皆様、新年度の大変お忙しい中、ご参列いただき、誠にありがとうございます。
さて、皆さんはこのキャンパスの各所に、「70」の数字が掲げられていることにお気づきになったと思います。茨城キリスト教学園は、今から70年前、第二次世界大戦後間もない1947年に「シオン学園」という名で誕生しました。夜間の英語学校、そして幼稚園からスタートしたこの学園は、実は創立当初から「綜合大学」の設立を目指していました。戦後民主主義の日本において、本学園の総合大学がこの茨城の地のみならず全国的に期待されていたのは、1947年5月9日付朝日新聞全国版「シオン大学いよいよ開校」という記事で、「総合大学の開校は来年になる模様」と報じられていたことからもわかります。しかしながら、実際に4年制大学を開設し、それが文字通り「総合大学」になるまでの道のりは決して平坦なものではありませんでした。「教養主義」を掲げる短期大学がまず作られ、アメリカ流リベラル・アーツ教育の導入が図られました。そして学園創立から20年後の1967年に、文学部単科大学として、茨城キリスト教大学は産声を上げました。当初この大学の英語名称はIbaraki Christian “College”となっており、現在のように”University”の名を冠してはいませんでした。「総合大学」を意味する英語”University”を名乗るようになったのは、2000年に2つ目の学部である生活科学部を新設し、短期大学が大学の1学部と位置づけられるようになってからのことです。短期大学と共同で新しい学部を作る事業は、地域医療への貢献を目指した看護学部の新設まで続き、その後茨城県北部において初の社会科学系学部である経営学部を新設するに及んで、この大学は名実共に「総合大学」に発展してきたと言えるでしょう。経営学部のできた2011年には、それまで文学研究科のみであった大学院にも、生活科学研究科と看護学研究科が加わりました。
学園創立当時のキャンパス写真を見ると、一面原野が広がっています。言い換えれば、ほとんど何もなかったところからこの学園はスタートしたのです。一方、今のキャンパスには、中学・高校・大学・大学院、そして大学附属認定こども園の校舎が立ち並んでいます。先人たちの並々ならぬ努力により、学部は増え、校舎も増えてきました。ある時は日本の経済成長と歩調を合わせるように、この学園・大学も発展してきたと言えます。翻って現在の日本、とりわけ地方に目を向けてみると、右肩上がりの経済成長は期待できなくなって久しく、少子高齢社会・人口減少社会にどう対応していくべきかという大きな課題に教育機関も真剣に取り組まなければなりません。とりわけ大学は、地域の拠点、知識あるいは知性の拠点として、社会から大いに期待される存在になっています。高校までの学びは、正解がある問いに答えるということが中心ですが、大学・大学院での学びは、「正解がない問いへの挑戦」と言えるかもしれません。「正解がない問いへの挑戦」などと聞くと、皆さんは途方にくれてしまうかもしれませんが、「YesかNoかの探求」ではなく、「Betterな答えの探求」と考えれば、学びに大きな可能性が広がります。また、大学・大学院には高校までのように学習指導要領に基づく検定教科書はありません。もちろん、授業で教科書や参考書が指定されることはありますが、「Betterな答えの探求」のためには、自ら貪欲に読書に取り組む姿勢が求められます。
大学が「地域の拠点」となるためには、教職員ばかりでなく、学生の皆さんも「地域とつながる」姿勢を持たなければなりません。私の学長としてのキャッチフレーズは、「つながる大学であり続ける」というものです。「地域とつながる」ためには、書物から知識を得るだけでは不十分で、自ら様々な機会を捉えて、地域に入り込んでいこうという意欲が必要です。授業だけでなく、インターンシップやボランティア等の豊富な機会を、この大学は提供します。このような積極的な学び、アクティブ・ラーニングから、地域課題解決に向けての「Betterな答え」が見つかるかもしれません。
逆説的な言い方になりますが、地域課題の解決のためには、地域に目を向けるだけでは不十分です。グローバルな視点を持ち、「世界とつながる」姿勢を持つことも同時に必要です。例を挙げれば、フランスがどのように少子化対策に取り組み、どのような成果が得られたのか、あるいは北欧諸国が教育や福祉の水準をどのように向上させてきたのか、このようなテーマを研究することで、私たちが住む地域の課題解決に向けての「Betterな答え」が得られる手がかりになるかもしれません。この大学では海外研修や留学の機会も豊富に得られますし、海外からの留学生と、授業内外で積極的に触れ合える機会も提供しています。
学生生活においては、我々教職員とのつながりだけでなく、先輩や同級生、それからこれから入学してくる後輩たちとのつながりも、かけがえのないものです。この春、学園創立70周年、大学創立50周年を記念して、皆さんの部活動やサークル活動の拠点となる新クラブハウスが完成しました。新たな環境の中で、皆さんが一生付き合える友人や先輩・後輩を得られることを心から願っています。
今から50年前の4月、この大学の開学式・第1回入学式において、引用された聖句は次のようなものでした。旧約聖書、イザヤ書第43章19節です。
見よ、わたしは新しい事をなす。
やがてそれは起る、
あなたがたはそれを知らないのか。
私は荒野に道を設け、
さばくに川を流れさせる。
これまでこの大学が歩んできた半世紀の間、荒野に道を設け、砂漠に川を流れさせてくれた先人たちに敬意を表しつつ、次の半世紀に向かって、共に一歩を踏み出しましょう。皆さんがこの大学で学ぶことで、学問的にも人間的にも大きな成長を遂げることを願いつつ、私の式辞を終えることといたします。
改めまして、皆さん、ご入学誠におめでとうございます。
2017年4月3日
茨城キリスト教大学
学長 東海林 宏司