茨城キリスト教大学

【COC+事業】茨城キリスト教大学シンポジウム「子どもたちに物語を届ける—読み聞かせという架け橋—」開催報告

【COC+事業】茨城キリスト教大学シンポジウム「子どもたちに物語を届ける—読み聞かせという架け橋—」開催報告

シンポジスト: 芳賀洋子氏(あそび舎てんきりん代表)
       渡邉晴子氏(NPO法人りぷりんとネットワーク理事長)
       山田由理子氏(NPO法人りぷりんとネットワーク事務局)
       原口なおみ(本学カウンセリング子育て支援センター)

司会: 中島美那子(本学地域・国際交流センター)

NPO法人りぷりんとネットワーク 山田由理子氏

東京都老人総合研究所(現東京都健康長寿医療センター研究所)は2004年よりシニア世代による絵本の読み聞かせ等学校支援ボランティア活動「Research of Productivity Intergenerational Sympathy: REPRINTS  (りぷりんと)」を開発・推進してきた。参加希望者は、インストラクターによる週1回2時間程度の研修を3か月間受講し、読み聞かせの意義、絵本の選び方、発声法などを学んだ後、6~10名程度のグループを組んで地域の小学校・幼保園等を訪問する。中央区・杉並区など都内だけでなく、川崎市・長浜市などにも地域に根差した活動グループがあり、全国組織のネットワークを作り、研修・相互交流によって、地域での活動をささえている。2015年のWHOレポートで「上手く考案されたボランティアプログラムは、シニア世代と地域社会にウィン・ウィンの関係性をもたらす」と評価された。2018年には、第16回読売福祉文化賞(高齢者福祉部門)を受賞、行政からの受託事業も増えている。

渡邉晴子氏

同法人理事長であり、川崎市の学校・幼稚園・保育所・放課後学童保育などで、絵本を読み聞かせてきた。自分の声で絵本を読むことで、子どもたちとの繋がりができ、町で「りぷりんとさ~ん」と声を掛けてもらうことも。少数派のおじいちゃんは、保育園でも大人気。還暦を過ぎて、新しい学びと仲間、そして健康を得て社会貢献できる充実感を、多くの方に味わってもらいたい。

あそび舎てんきりん 芳賀洋子氏

五味太郎の絵本『わにさんどきっ はいしゃさんどきっ』(偕成社)を、日本人と外国出身者が、わにと歯医者さんになって、それぞれがセリフを自分の母語で語り、その響きを味わう、あるいは、外国が舞台の絵本を読んで、その国から来た人に、故郷の暮らしを語ってもらうなど、絵本を囲んで地域在住の日本人と外国人が互いに語り合う場を、さいたま市で作っている。
この活動が発展して、現在は、図書館や学校などで多言語のおはなし会を開いている。おはなし会で、自分のお母さんが母国語で語り、皆が楽しむ様子を見て、子どもが自分の母親と、そのことばへの信頼と誇りを取り戻すことがある。また、外国出身者が学校で堂々と自己表現する姿に接して、普段は教室に居ることのできない居心地の悪さを感じている日本人児童が、生き生きと発言し始めたということもあった。
アメリカの子とインドの子が文通する絵本『おんなじ、おんなじ!でも、ちょっとちがう!』(ジェニー・ス—・コステキ=ショー作、光村教育図書)のように、「おんなじってうれしいね!ちょっと違うって楽しいね!」と感じられる関係を作っていきたい。外国から来て日本の各地に住んでいる人々と絵本を読み合うことは、互いに理解を深め、外国出身者の力を発揮してもらうきっかけとなり、私たちの地域での暮らしを豊かにするよい方法であると実感している。
 

茨城キリスト教大学 原口なおみ

東京子ども図書館おはなしの講習会でストーリーテリングを学んだ後、20年余り、地域のお話ボランティアの方々と勉強を続けながら、幼稚園6園で月例お話会を続けている。「ホットケーキ」などの昔話を、子どもが心底楽しむ様子を見て、子どもに語るときに大切なのは、子どもの心にまっすぐに届くお話・絵本を選んで、そのお話に合った語り方・読み方をすることであると感じている。子どもが自由に想像力を羽ばたかせ、おはなし・絵本を楽しむ様子を受け止めるためには、「経験と知性に裏打ちされた勘」のようなものが必要だといわれる。子どもと本に関わる専門職を認めない今の日本で、読み聞かせボランティアが、安価な労働力として使い減らされないためにも、子どもに物語を届けることの意味を考え、互いの経験を共有し、子どもと本を見る目を育てる仲間との学びの中で、自分を囚われから解き放っていくことが必要であると思う。物語には、人を育て、人と人を繋ぐ力がある。大昔から年寄りは子どもたちに、自らの声・母語でお話を語ることで、暮らしの中で見出した、これは真実だと信じた智慧を伝えようとしてきた。そして、お話を喜ぶ子どもたちを見て、命の連なることを感じて支えられてきたのだから。

会場の様子

一般の方の感想から

子どもたちへの絵本の読み聞かせや、おはなしが文化交流や生きがいにもつながるという広がりを持つことが新鮮で、まさに架け橋でした!素敵な活動、ぜひ末永くご活躍ください。我が子と楽しんだ絵本の時間を思い出し、心が温まりました。

NPOりぷりんとネットワークのお話がとても参考になりました。「地域に根差した活動の継続性」維持には、組織が必要であり、メンバーを選抜して会員制をとることの重要性を改めて認識しました。日本では無償のボランティア奉仕が美徳とされていますが、組織化・マネライズを推進するべきと思いました。

現在、幼稚園や小学校での読み聞かせを行い、ストーリーテリングの勉強もしていますが、もともと外国文化や異文化交流に興味があり専攻し、学生時代には世界放浪もしました。今日、「てんきりん」さんの活動を知り、自分の中の興味がつながった!と感動を覚えました。

「てんきりん」「りぷりんとネットワーク」どちらの活動も、今まで全く知りませんでした。地域で活き活き活動されていることを知り、私の知っている「絵本」の世界が広がった思いです。

絵本の読み聞かせを通して、様々な活動が展開されていることを知りました。絵本の読み聞かせが、人と人の信頼関係を築き、国・地域を超え、世代を超え、人と人とを繋ぐのだと、考えました。

読み聞かせは、奥の深いものだと強く思いました。常に向上心を持ち、学び合いを重ねていくことが大切。それには、自分に対する厳しさも必要で、むづかしいこと、とも思いました。

文学部児童教育学科幼児保育専攻2年生の感想から

・ 子どもたちに絵本を読み聞かせるのは、子どもの情緒やことばの発達を促すためだと考えていたが、子どもと高齢者相互のためになる、りぷりんとネットワークの活動を知り、少子高齢化社会の対策になると思った。読み聞かせでは、伝え方を工夫したり、子どもの反応から学んだり、豊な表現や感情にもつながる経験になるはずだから。


実習先でも、毎週地域のシニアが読み聞かせにいらしていた。大学生になって改めて子どもの時に読んだ絵本に触れて、子どもの時には絵やことばの響きを楽しんでいたが、大人になると意味を読み込んでいる、ということに気づいた。大人がおもしろいと思う本ではなくて、子どもが楽しめる本を選びたいと思った。

実習をした園にも、外国から来た子どもがいた。私が保育の場で働くようになる頃には、母語が日本語でない子どもが、もっと増えていると思うので、「外国人」と特別な目で見るのではなく、どの子も自分に自信を持つことができるような援助をしたいと思った。そのための絵本の使い方を、今日、少し知ることができたように思う。

絵本は世代や文化を超えて子どもたちに届くだけでなく、人と人とをつなぎ、コミュニケーションを豊にするということが解った。子どもたちに読み聞かせを楽しんでもらうために、様々な経験を重ねながら、その本にあった読み方を掴んでいくことが重要と思った。 

絵本は深いと思った。自分が絵本を選ぶときは、絵が可愛いもの、話がおもしろいものを選んでいたが、それぞれの絵本の意味と子どもの受け止め方を知って選ばなければならないと、思う。

読み聞かせというと、大きい声で抑揚を付けて読むなど、技術に気を取られがちだったが、子どもが楽しいと思うのはどこなのか、子どもは興味を持って聞き満足したのかなど、子どもの反応に注目して、子どもと楽しみを共有できるような読み聞かせがしたいと思った。

子どもたちが楽しいと思う絵本を選び、そう思ってもらえる読み方をする、その子の母語で読むことで自信を取り戻す、また、生きてきた世代が違っても、読み継がれて来た絵本を読むことで、人と人の距離が縮まるという言葉が印象に残った。

・ 絵本を読み聞かせることで、子ども同士がつながったり、異文化・異世代の人がつながったりできると知った。読み聞かせが、いつの時代にも子どもたちに好まれるのは、読み聞かせの、このような本質によるものではないかと思う。


以上のように、人の声で伝えられる絵本・おはなしが、人と人をつなぐ架け橋となることの確信できる、あたたかいシンポジウムになりました。ご参加下さった皆様に、心より御礼申し上げます。

地域・国際交流センター

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地域交流課では、学生ボランティアの他にも地域に貢献できる講習や講演会を企画しています。
地域社会との連携、地域活動のほかに、公開講座・県民大学など各種講座運営、聴講生に関すること、広報誌「みどりの」編集・発行、地域・教育ボランティアに関することを担当しています。

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