茨城キリスト教大学

カウンセリング子育て支援センター開設記念講演会:「沢 知恵いのちをうたう」ご報告


梅雨の明けた6月30日土曜日午後、学園の礼拝堂キアラ館にて、カウンセリング子育て支援センター設立記念・前期キリスト教講演会「沢知恵いのちをうたう」が催され、地域の方100人余、学生・教職員60人余が、沢知恵さんのいのちのうたに包まれました。

 はじめにアカペラで唄って下さった『アメイジング・グレイス』は、いのちへの讃歌のようで、堂内は一瞬にして沢ワールドに。続いて、ピアノに向かって唄って下さったのは、茨木のり子の『六月』「…どこかに美しい人と人との力はないか/同じ時代をともに生きる/したしさとおかしさとそうして怒りが/鋭い力となってたちあらわれる」。昨夜到着された大みか駅で、「共に生きる」の学園大看板をご覧になり、プログラムに加えて下さったとのことでした。

 母方のおじい様、金素雲の訳詞に曲をつけた『こころ』の後、お父様が朝鮮半島での日本の罪を償おうと、日本人として戦後初めて韓国に留学、周囲の反感に屈せず、赤いチマチョゴリを着たお母様を妻として日本に迎えたこと、おおらかで繊細だったお母様のこと、「それで、知恵はどう、思ったの?」と、カウンセリングのように聞いて下さったお父様のこと、そして自宅出産でお二人のお子さんを迎え入れたご自身の体験、沢さんに寄り添い相談に乗って出産育児を支えてくれた助産師さんや保育士さんへの感謝。ピアノの前で唄うように、沢さんはいのちのつながりを語り、唄って下さいました。

 宣教師であったお父様は、1971年夏、6か月の赤ちゃんだった知恵さんを瀬戸内海大島のハンセン病療養所大島青松園に連れていきます。国の隔離政策により、故郷との繋がりを絶たれ、自らの子を抱く幸せを奪われた療養所の人たちは、20年以上後に大島を再訪した沢さんを「知恵ちゃん、おおきくなったね、よう来たね」と涙を浮かべて迎えてくれたとのこと。大島青松園で暮らし、深いやさしさのある言葉で詩を書いた塔和子の『胸の泉に』も唄って下さいました。「かかわらなければ/この愛しさを知るすべはなかった/この親(ちか)しさは湧かなかった…かかわることから始まって/かかわったが故に起こる/幸や不幸を/積み重ねて大きくなり/くり返すことで磨かれ/そして人は/人の間で思いを削り思いをふくらませ/生を綴る」

 大島の人たちを忘れないために、2001年から毎年続けておられる大島青松園コンサートでも必ず合唱になるという『ふるさと』を沢さんのリードで歌ったのち、(最後の曲は)水戸で生を受け、満州で英語教師をなさっていて招集され、ソ連での抑留生活を経て帰国された、父方のおじい様と高校生の時に交わした対話から創ったという『われ問う』でした。「大好きなおじいちゃんどうしてこの国は戦争したの?/おじいちゃんほどの人がどうして戦争を止められなかったの?/大好きなおじいちゃんほんとうのことを教えてよ/どうすれば同じあやまちをくり返さなくてすむの/ここまでなら大丈夫とだまって見ているうちに/気づいたら何ひとつ自由にものを言えなくなっていた/大好きなお父さんどうしてあの人たちを見捨てたの?/お父さんほどの人がどうして見て見ぬふりをしたの?/大好きなお父さんほんとうのこと教えてよ/もしかしたら私いまだれかのことを見て見ぬふりしているの/私なりにかかわりせいいいっぱいやったつもりでも/時代の重さとはやさに押しつぶされて流された/愛する子どもたち私はあなたを守りたい/はじける笑顔いついつまでも消えないでいてほしいから/愛するこどもたちおろかなおとなに語っておくれ/正義と愛とまことと夢と希望と未来を」
 
 地域の方々と学生・教職員のかかわりをつむぎ、共に生きる私たちの生を綴りたいと設立した、カウンセリング子育て支援センターの使命を改めて心に留めた、キアラ館での午後でした。お出で下さった皆様や学生の感想にも、沢さんの唄を、ご自分の深いところで受け止め、己に問いかけている姿が感じられました。
(カウンセリング子育て支援センター長 原口なおみ)


一般の方の感想から

●改めて音楽のちからを感じました。礼拝堂という場の力もあるでしょうが、心身に響く歌声でした。ご自身の出産・子育てのお話も、大島青松園のお話も、「いのちをうたう」にふさわしい、時代に求められているものと思われました。また茨城に来てください。
 
●歌やピアノはもちろん、お言葉のひとつひとつが胸に響き、数年前に亡くなった父や、離れて住む100歳の祖母のことを想い出しました。続いていく命を深く考えさせられた会でした。
 
●3か月前に亡くなった夫のことがしみじみ思い出されました。また、がんばろうと思いました。
 
●力強く、あたたかさのある美しい歌声に惹きつけられ聴き入ってしまいました。こんなに胸が熱く心が震えたのは久しぶりの体験でした。仕事と育児に追われる日々の中で、自分にご褒美のような時間でした。とても素晴らしい時間をありがとうございました。私も、保育士という仕事を、これからも更に心を傾けて頑張りたいと思いました。
 
●託児をお願いして、心に響く歌を生でゆっくり聞けました。感謝です。
 
●夫と二人で久々に沢さんの歌とお話に浸り、豊かな時間を過ごせました。私も子育てに奮闘中。夫や子どもとぶつかることも多いですが、こんな日々も、きっとあっという間なのでしょうね。
 
●「子は親とかかわり/親は子とかかわる」という塔和子さんのフレーズを聞いて、命の大切さ、偉大さを感じました。沢さんのように、私も地域とかかわって生きたい、と思いました。
 
●心に深く響く唄・お話に感動しました。『ネギをうえた人』読んだばかりですが、私もおはなしのボランティアを通して、人とかかわっていきたいと思いました。
 
●学生時代に、お父様・お母様の著書を読んで感動していたので、今日は知恵さんの唄が生で聞けて、とても嬉しく思いました。
 
●心に残る時間でした。歌で心にメッセージを届けられることが素晴らしい。自分の立ち位置も、考えさせられました。
 
●「どうして戦争になったの?止められなかったの?」と、私も幼い時から考えていました。『われ問う』、心に沁みました。今、多くの人に聞いてもらいたいと、思いました。




文学部児童教育学科幼児保育専攻3・4年生の感想から




●『アメイジング・グレイス』を聞いた時、鳥肌がたった。生でプロの伴奏無しの歌を聞いたのは初めてで、声だけだからこそ分かる繊細な表現に触れ、神聖で、心がまっさらになるような感じがした。

●ピアノに向かって最初に弾いてくださった『リッスン・トゥ・マイ・ヴォイス』好きになりました。沢さんが、一人で歌うのではなく、私たちにも歌うよう促してもらい、自然にぽんと声が出て身体が動き、キアラ館の全員が、この空間を共有し一つになれた感じがしました。ピアノの音色も素敵で、今、自分は曲に包まれている、歌の世界にしっかり溶け込めていると感じられました。コンサートに参加したのは初めてでしたが、歌詞が一句づつ心にずっしり来ました。

●ピアノと歌だけなのに、とても力強くて、一曲一曲に込めた思いを、聴いている人にきちんと届けるよう歌っている感じがし、歌詞を味わいながら聞きました。

●『こころ』は、旋律もことばの響きもきれいで、純粋にこころが癒されました。自分の思いや伝えたいことを、音楽と言葉で伝えられる才能があることのすばらしさを感じ幸せでした。

●『小さな恋のうた』は、恋愛の曲と思っていましたが、沢さんの声で「やさしい歌は世界を変える」と聞いた時、青い地球の上で様々な国の子どもたちが笑顔で歌いながら手をつないで輪になっている情景が浮かびました。

●日本語・英語・韓国語の歌詞のある『盛岡スコーレ高校校歌ひとりひとりのうた』から、宣教師としていろいろなところに溶け込んで暮らし、世界を見せて下さったというご両親のことが想像できました。

●ハンセン病の方たちの話を初めて聞き、残酷な現実にショックを受けたと同時に、さらに理解を深めたい、知りたいという気持ちになりました。

●『胸の泉に』の「かかわらなければ」というフレーズが印象に残りました。自分のことと重ね合わせて聞いて、人と関わりを持ち、きちんと向き合うことで成長できるのだと思えました。かかわることで嫌な思いをしたり、面倒くさかったり、かかわらない方が楽という気持ちがありますが、関わっていろいろな体験を積みたいと、前向きな気持ちになりました。

●最近、人間関係に悩んで疲れていましたが、今日、沢さんの歌を聞いて、こういう風に悩むことも、私にとって必要で、意味のあることなのだと思えました。

●ご自宅での出産のお話を聞いて、今、隣で一緒に聞いている母も、私を生んで初めて胸に抱いたとき、同じように感動したのだろうなあ、と思った。親と子は一番深く関わりあって、ぶつかることもあるけれど、一生関りが途切れないのだろうと思う。

●『ふるさと』は、よく知っている曲でしたが、まるで、初めて聞いたような、それでいて、やはり昔から知っているような不思議な感覚になりました。歌詞が耳に入った瞬間に透けて情景に変化していくようで、あたたかい陽ざしや通っていた学校が浮かび、当時に帰りたくなりました。途中から私たちも歌いキアラ館全体が一つになったかのようで、あたたかい時間が流れ涙が出そうになりました。

●『われ問う』の「ここまでなら大丈夫と だまって見ているうちに/気づいたら 何ひとつ自由に ものを言えなくなっていた」という歌詞が、とても印象に残った。…自分がどのように生きていきたいのか、どういう世の中で生きていきたいのか、よく考えて行動したいと思った。自分一人は小さな存在でも、ひとりひとりの力が重なって大きな力になると思うので。

●アンコールで唄って下さった『ありのままの私を愛して』は、「まちがってもいいじゃない」「立ち止まってもいいじゃない」「傷ついて気づくこともあるじゃない」「やり直せばいいじゃない」「あきらめなくていいじゃない」のフレーズが、今の私の背中を押してくれるように感じられました。歌に心が救われるということがあると、実感しました。

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