茨城キリスト教大学

IC研究トピックス002:日本のカウンセリングはどう広がった?−本学初代短大学長ローガン・J・ファックスと「ノールール」の講習会−

生活科学部心理福祉学科の山川誠司准教授らが、本学園に残るローガン・J・ファックスの資料などから、日本にカウンセリングが普及していった過程を検討しました。

「カウンセリング」という言葉が日本に広まり始めたころ、どのように学ばれていたのか。生活科学部心理福祉学科の山川誠司准教授、櫻井由美子教授、岩﨑眞和教授、望月珠美教授、青木万里教授は、本学初代短大学長ローガン・J・ファックスが開催に深く関わった夏期カウンセリング講習会に注目し、本学園に残る資料などから、日本にカウンセリングが普及していった過程を検討しました。
研究チームはその成果を日本心理臨床学会第45回大会(2026年8月28日~30日)で発表しました。

ロジャーズの考えを日本へ

米国の心理学者カール・R・ロジャーズは、来談者中心療法を提唱し、カウンセリングの発展に多大な影響を与えました。
このロジャーズの理論と実践を日本に伝えるうえで重要な役割を果たした人物の一人が、本学園の創設に携わったローガン・J・ファックスです。ローガンはシカゴ大学大学院でロジャーズと出会い、来日後は著作の日本語版出版を支えました。
1961年のロジャーズ来日では、講演やワークショップの通訳も務めました。
 
 

決まった正解を教えない講習会

ローガンらは、1955年から1981年までに14回の夏期カウンセリング講習会を開きました。参加者は講義を聴くだけでなく、カウンセリングのやり取りを文字にした記録などを読み、自分で考え、話し合いながら学びました。
ローガンは、講習会において「ノー・ルール(No Rule)」という基本理念を提唱し、講習会もこの理論をもとに行われました。これは、参加者の自由な発想や主体的な関わりを重視する考え方でした。

戸惑いから、体験を通した理解へ

当時の記録には、進め方を細かく定めない方針に対する参加者の戸惑いや混乱が残されています。
一方、数日間をともに過ごすなかで、自らの体験を通してカウンセリングへの理解を深めていく過程も記録されていました。
研究チームは、主体的な関与を前提とした講習会が、体験を通してカウンセリングへの理解を深める機会になった可能性を指摘しています。

学園に残る記録が歴史を伝える

この研究は、出版物、ローガンとロジャーズの往復書簡、講習会の記録などを読み解く歴史研究です。
講習会だけによって日本にカウンセリングが普及したと断定するものではありませんが、これまで十分に検討されてこなかったローガンの役割と、体験を重視した学びの場が果たした役割の一端を示しています。
研究チームは今後、講習会がその後のカウンセリング教育に与えた影響を、さらに資料を収集して検討するとしています。

研究チームにインタビュー

Q1.なぜ今、ローガン・J・ファックスを研究するのでしょうか。


本学の公認心理師養成課程は、準備期間を含めるとそろそろ10年になります。
学部・大学院ともに体制が整ってきた今、「本学だからこそ深められる心理職の学びとは何か」をあらためて考えました。
その探究の中で、戦後の日本にカウンセリングを広めるうえで重要な役割を果たしたローガン・J・ファックス先生の存在に行きつきました。

Q2.学園資料センターの資料や収集した文献から、新たに分かったことは何ですか。

これまでローガン先生は「聖職者」として紹介されることが多かったのですが、資料を丁寧に読み解くことで、ロジャーズの理論と実践を体得し,さらに独自の視点によってそれを深化させていたことが見えてきました。こうした点から、心理学者としての側面が明確になりました。
また、日本でカウンセリングを紹介する際、単なる仲介者ではなく、ローガン先生自身の理解や姿勢がそのプロセスに反映されていた可能性も見えてきました。

Q3.今後、どのような資料を収集し、研究する必要がありますか。


国内外の文献をさらに収集し、ローガン先生の業績をより深く調べる必要があります。
そうした知見を積み重ねることで、日本のカウンセリングの特徴や成り立ちをより深く理解できると考えています。
 

学会発表情報

山川誠司,櫻井由美子,岩﨑眞和,望月(川端)珠美,青木万里(2026).Logan J. Foxから見たRogers, C. R.と日本におけるカウンセリングの普及—「ノールール」に基づいた夏期カウンセリング講習会を題材に—.日本心理臨床学会第45回大会,ポスター発表.

山川先生、櫻井先生、岩﨑先生、望月先生、青木先生、貴重なお話をありがとうございました。

※当ニュースにおけるローガン・J・ファックス先生の写真(サムネイル写真・背景写真)は学園資料センター所蔵資料を使用しています。

REP事業

IC研究トピックス

学術研究センターでは,研究力強化プログラム(REP)の一環として,本学教員の研究成果を紹介する「IC研究トピックス」を掲載します。
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