茨城キリスト教大学

児童教育学科:柳橋晃先生が日本道徳教育学会賞を受賞いたしました

児童教育学科の柳橋晃先生が日本道徳教育学会賞を受賞いたしました

本学児童教育学科の柳橋晃先生が、日本道徳教育学会賞を受賞いたしました。受賞論文名は「カントの道徳哲学と道徳教育思想における実例の位置づけ」です。

受賞した柳橋晃先生からのメッセージ

近年、道徳教育は「特別の教科」を中心に再編され、その重要度は増しています。こうした状況において、「カントの道徳哲学と道徳教育思想における実例の位置づけ」という論文で日本道徳教育学会賞を受賞いたしました。身に余る光栄を感じております。
日本の学校で使用される道徳教材のほとんどは、実例で埋め尽くされています。しかし、これとは対照的に、カントは、無闇な実例の使用を戒め、実例の使用に非常な慎重さを求めています。これはどうしてでしょうか。
カントは、主観の恣意に左右されない普遍的な善さを求めました。そして、カントは、こうした道徳哲学の構築を試みながら、「(人間の)尊厳」を平等で普遍的な価値と論じました。こうした事情を背景として、カントは、子どもたちの理性から道徳法則を引き出し、子どもたちに「(人間の)尊厳」について気づかせる実例の案出を試みています。従って、カントにおける道徳教育は、一義的に内容項目を扱うようなものではありません。むしろ、子どもたちが普遍的な善さの案出に参画できるよう促すところに、その特徴があります。
道徳教育は価値を扱うものであるがゆえ、そこにはどうしても主観の恣意が混入されてしまいます。こうした道徳教育の難点に反省的であるためにも、一度カントなどの道徳哲学を参照し、そこから道徳教育を眺めてみてはいかがでしょうか。大外回りな作業かもしれませんが、より普遍的な善さが実現される社会の構築に寄与すると信じています。