学校法人茨城キリスト教学園

【インタビュー(2/2)】本学留学生が県内民間企業に就職しました!

2019年よりベトナムから本学に交換留学生として学んだベトナム人のトゥ ティ ホン リン(TU THI HONG LINH)さんが、2022年5月に茨城県内のロボティクス事業・クライアントワーク事業・ITサービス事業を手掛ける株式会社ユニキャストに就職しました。コロナ禍での苦労と、それらをどう乗り越え、日本で学びを続け、就職活動をしてきたのか…リンさんとユニキャストの皆さんにお話を伺いました。

左から 代表取締役/大学経営学部経営学科特別専任教員教授 三ツ堀裕太さま
本学元留学生/(株)ユニキャスト入社(2022) トゥ ティ ホン リンさん
コーポレートユニットリーダー 田中優香さま






新妻
「本日はお時間をいただきありがとうございます。皆さまのお話を通して、リンさんの留学から就職するまでのストーリーを深堀りできたらと思います。まず初めに、リンさんがどのような経緯で日本に興味を持ち、留学しようと思ったのか、教えていただけますでしょうか。」

リンさん
「私はもともと日本のサブカルチャーが大好きだったんです。小学生の時から、日本で言う“お年玉”は日本の漫画のレンタル代に充てていました。レンタルショップに通ううちに友人ができたくらい、私の人生の幅を広げてくれたのが日本のサブカルチャーです。特に好きなアニメは「ちびまる子ちゃん」です。私にも姉がいるので、重なるところがありますね。日本にいる現在もアニメはよく観ていますよ。YouTubeで「あたしンち」公式が無料で短編アニメを放送してくれているので、オススメです!…ということで、かねてより日本に興味があった私はフエ大学外国語大学日本語日本文化学部日本語日本文化学科に進学しました。留学しようと思った理由は二つあって、一つは、“留学したほうが就職の際に強い”と言われてきたからです。もう一つは、日本の文化や就業環境を実際に自分の目で見てみたいと思ったからです。留学前から日本での就職も前向きに検討していたのですが、友人に「日本の会社はブラックで厳しいよ」と言われていたんです。しかし、もともと日本が大好きだったので、そういった噂話で自分のキャリアの幅を狭めたくなかったんです。」


新妻
「そうだったんですね。そんなリンさん、日本にはどんなスケジュールで、どんなことを学びに留学する予定だったのでしょうか。」

リンさん
「2019年の10月から1年間の留学を予定していました。しかし、2020年3月には新型コロナウイルスまん延によるベトナムのロックダウンの状況を見て同時期に留学していたヴィさんが帰国したことにより、大学内で留学生は私だけという状態になりました。4月には留学生が20名ほど来る予定だと聞いていましたが、結局情勢は変わらなかったことからそれもかなわず、引き続き留学生は私だけの状態でした。大学で受ける留学生向けの講義は、いわば“家庭教師”状態でしたね(笑)。先生と、アシスタントの大学生と、私。マンツーマンで講義を受けられたことはありがたかったです。

新妻
「留学期間は2020年9月までだったと思いますが、その後の期間はどこで、どのように過ごしたんですか?」

リンさん
「留学期間も間もなく終わると言うころ、帰国の準備を試みましたが、コロナで飛行機が飛ぶめどは立ちませんでした。チャーター便を予約するという手段もあったのですが、通常の飛行機よりも倍以上の価格がするのと、申し込みをしても確実にチケットを取得できるか分からない(しかし、申し込みをした時点で一定の料金は取られてしまう)という不確定要素も多く、結局は帰国を断念せざるを得ませんでした。そこで、そんな私の状況を何とかしようと大学のキャリア支援センターの皆さんが、大学近くの地域企業であるユニキャストに対し、私をインターン生として受け入れてくれないか、打診をしてくれたのです。

新妻
「なるほど、そういう経緯だったんですね。ユニキャストは三ツ堀さまが茨城大学工学部の大学院生時代に立ち上げた学生発ベンチャー企業ですよね。今回、直接キャリア支援センターから打診をいただくまでの関係性は、いつから生まれたものなのか、改めてお伺いしてもよろしいでしょうか。」

三ツ堀さま
「当社は、先ほど仰っていただいた通り“学生発ベンチャー企業”という特異性を持っており、母校である茨城大学と茨城キリスト教大学の学生たちとのネットワークが強みとしてあります。そのような背景もあり、茨城キリスト教大学で講師として教える機会をいただきました。学生たちと関わる中で、社会貢献活動および人材発掘の観点から、2011年より茨城キリスト教大学の学生を中心とした「地域貢献サークル HEMHEM(ヘムヘム)」を設立しました。2015年には、地域とのつながりを大切にしたい活気あふれる若者を集めて共に成長する仕掛けとして、「地域貢献型シェアハウス コクリエ」を竣工。同時に、ユニキャスト本社もコクリエに移転しました。コクリエは、HEMHEMのもう一つの部室のような立ち位置になっていましたし、茨城キリスト教大学の留学生も何名か住んでいました。


新妻
「コクリエの“安心安全な環境で共創を生み出す”というコンセプト、とても素敵ですね。今後ともよろしくお願いします。さて、そのような背景もあり、帰国ができなくなったリンさんと初めてコミュニケーションを取った時の印象やエピソードがあれば教えてください。」

田中さま
「それまでソフトエンジニア枠でのインターン生は募集していたのですが、リンさんのキャリア観をお伺いした時に、SEよりも人と接する仕事で活躍したいという明確なキャリア観がありましたので、これを機に“営業アシスタント”というジョブを設けることにしました。はじめのうちはエクセルでのデータ処理などをお願いしていましたが、そのうち、ロボットの出荷前点検や梱包などの大事な作業もお任せできるようになりました。リンさんはとにかく努力家です。何もわからない状態からロボットの出荷前点検の経験を積んでいく上で、開発者であるエンジニアとは異なるお客様視点で色々な不具合を挙げてくれることが増えてきて、その成長速度に驚きました。分からないことがあった時に教えてもらうまで待つのではなく、自分なりに次の行動をとって動きながら学ぼうとする前向きな姿勢で従事してくれたからこそ、物事の吸収が早いのだろうなと思いました。他の人をいつも観察してくれているからなのか、特に教えたことが無い来客対応などもスムーズにこなしてくれた時は驚きました。主体的で機転が利く、大変優秀な方です。業務に限らず、自己研鑽においても絶えず努力を重ねてくれています。日本語検定は最高難度のN1(日本語能力検定試験1級)に合格しました。次は、彼女のキャリアアップを考えてビジネス系の検定を受けるよう、勧めています。」


 
新妻
「それは素晴らしいですね!リンさん、今の先輩社員の評価なども踏まえながら、ユニキャストでインターン生として従事している感想などがありましたら聞かせてください。」

リンさん
「顔が赤くなって、恥ずかしいです…(笑)。このように言っていただき、嬉しいです。それまでエクセルは触ったことがありませんでしたが、使っているうちにとても便利なソフトだと痛感しましたし、社会人になる前に覚えることができて良かったです。ユニキャストの皆さんは本当に優しく、私個人のキャリアに真摯に向き合ってくれます。インターン期間も引き続き延長して大学に通わせていただくことになった時も、三ツ堀さんが今後のキャリアも踏まえてどのような講義を受けたらよいかアドバイスに乗ってくれました。結果的に、ベトナム人は日本に留学したのちブリッジエンジニア(海外企業と日本企業との間に立ち、橋渡しの役割を持つシステムエンジニア)になるケースが多いことから、語学にプラスして、経済・経営の授業を受けることにしました。また、ユニキャストでは、定期的な先輩社員との振り返り・評価の場があります。自分と同じ評価項目で先輩社員も評価をしてくれるので、客観的に自分を捉えることができるんです。評価されるのも、失敗するのも怖いです。しかし、年齢も近い先輩社員の皆さんが同じ目線で問題解決に取り組んでくれるからこそ、私は頑張れるんだと思います。

新妻
「いい意味で、社員とインターン生の線引きをせずに本音本気で接してくれる、あたたかい会社であることが伝わってきました。とはいえ、リンさんの仕事に対する熱量の高さには目を見張るものがあります。どうしてそこまで仕事に向き合えるのでしょうか?」

リンさん
「そうですね…おそらく、“替えがきかない”プレッシャーが原動力になっているのだと思います。留学中もいくつかのアルバイトをさせていただきました。もちろん、どのお仕事からも学ぶことがありましたし、優劣はありません。しかし、マニュアルに沿って全員が同じように動くことが多かったアルバイト時代に対し、ユニキャストではある程度の仕事を個人に任せてもらえることから、常に“まずは自分で”考えながら動かないといけません。なので、たとえ1インターン生であっても主体的に考えて、動いて、会社に貢献できるように努めています。

新妻
「そうなんですね。変化が当たり前の社会、昨日まで正解だったことも今日には正解ではなくなることも平気であると思いますが、リンさんの“まずは自分で見て、動いて、本質を捉えようとする姿勢”はきっとこれからの社会で大いに役立つと思います。最後になりますが、これから社会に本格的に飛び込んでいくリンさんに対してお言葉をいただけますか?」

三ツ堀さま
「リンさんの“人当たりの良さ、周りの人を巻き込む力”を活かし、今後ベトナム企業との連携事業の中心メンバーとしての活躍を期待しています。仲間を増やしてさらに頑張ってもらいたいです。」

田中さま
「リンさんのあまりの存在感とスキルに、「コロナが収束したら帰国しちゃうの…?」と心配の声さえ出ているくらい(笑)、リンさんは社内でも中心的な存在です。日本でキャリアアップという夢をぜひ実現してほしい…私たちはその一心だけなので、リンさんのキャリアアップの一助になれたらいいと思っています。」



リンさん、ユニキャストの皆さん、ありがとうございました!

茨城キリスト教大学は、「隣人愛」を基盤として、グローバルな視野をもって地域社会に貢献できる人間を育成することを目指しています。海外からの留学生が、豊かな学びとともにこの地域で活躍する姿は、まさに「世界とつながる」学園建学の精神が形になったものです。引き続きのご支援とご協力をよろしくお願いいたします。