学校法人茨城キリスト教学園

【インタビュー】
高校女子駅伝チームの軌跡 監督・関山友子先生に聞く

2021年12月26日(日)女子第33回全国高校駅伝競走大会(京都市)が開催され、1時間12分50秒、27位でゴールした女子陸上部。今回は、全国大会を率いて10回目となる監督の関山先生に、着任当初を振り返りながら、県内常勝校になるまでの軌跡についてお話いただきました。

 

高校 関山友子 先生
(担当教科・保健体育、陸上部顧問)

全国高校駅伝の結果についてはこちら
 
 

全国高校駅伝について

新妻
本日はよろしくお願いします。まずは、全国高校駅伝から1か月が経ちましたが、今年の全国駅伝の感想を教えていただけますでしょうか。

関山
よろしくお願いします。今思うこととしては、今年もコロナ禍での開催となりましたが、何のトラブルもなく選手たちが走りきることができたことに対する、関わってくださった全ての人への感謝の気持ちが一番です。本当にありがとうございました。来年も、今回の全国高校駅伝を体験したメンバーが中心にチームが組まれることになるかと思うので、選手一人ひとりの飛躍が楽しみですし、来年目指すべき目標・ラインも見えてきました。
生徒たちの感想は様々でした。「一区走者としていい流れを持っていきたかった」と話す後藤、「自分の力を出し切れなかった」と悔しい表情を見せた小野、「リラックスして自分の走りができた」と安堵している渡邉・山形。本人にとっては初の全国大会でアンカーを背負う重圧を感じていた袴塚。…でも、過ぎてしまったことは仕方がないんです。悔しい想いも、嬉しい想いも、私の教えのもとに走ってそう感じたのですから。もし、マイナスな想いを抱かせてしまったのであれば、それは本人ではなく顧問の私の責任なんです。来年は、より全国で戦えるチームに成長していきたいと皆で誓いました。

新妻
そうなんですね。県内の大会ではありがたいことに常にトップを走ってきた彼女たちにとって、全国トップレベルの強豪チームが自分の前に20以上もいる状態で走ることは、大きな経験・財産になったのではないでしょうか。さて、前回取材させていただいた、県大会終了後~市長への表敬訪問から、全国高校駅伝当日までどのように過ごしてきたのでしょうか。

関山
県大会~全国大会までの2か月って、実は結構忙しいんです。関東大会をはじめとしたいくつかの大会がありますので。これらの大会にも出なければならない、しかし全国に向けての調整が第一で身体を壊すわけにもいかないから、攻めるに攻めきれない…。前回もお話した、“少数精鋭”であるが故の課題でもあるのですが、メンバーの替えがきかないので、毎日慎重に過ごさなければいけません。もちろん、淡々と・粛々と、日々の練習は生徒主導でこなしてもらっていましたよ。

新妻
なるほど。学校単位だったり、県・市区町村単位だったり、…特に陸上部はたくさんの大会があるイメージだったので納得です。そんな陸上部、新チームでの初陣となる大会を2月頭に控えているということで、ここからまた新しい物語が始まると思うと楽しみですね!

県大会完全優勝を祝し学園内に掲示されたポスターと全国大会当日の朝、意気込む女子長距離メンバー

着任当初の陸上部について

新妻
さて、今でこそ県内常勝校となっている女子陸上部ですが、関山先生が着任されることになったきっかけや、着任当初のエピソードがありましたら教えてください。

関山
ICHに来るまでは公立の小中学校に19年勤めていたのですが、子育てもしっかりと務め上げたかった私は、非常勤講師へと雇用体系を変更しました。そのころ、私が本校陸上部時代の恩師だった鈴木季美雄先生にお誘いを受け、コーチとしてお手伝いをさせていただくようになりました。2010年には初の全国大会を経験、2016年には専任監督として正式に着任し、全国大会にチームを率いるのは今年で10回目となります。
着任早々の陸上部は、今と変わらず県内トップレベルの成績を残していたものの、正直なところ、「この練習量だったら、もっと記録が伸びてもいいのに…」と感じてしまったんです。きっと、生徒たちの中には、どこかで練習を“やらされている”という感覚があったのではないでしょうか。例えば、練習時、監督である私の前では自分を律していられても、私の居ないところになると少し手を抜いてしまったり、走ること以外の態度に対して、違和感を覚える場面がありました。
生徒が自分自身で動機づいて“やらねばならぬ“と思って行動しないと、真に強い選手にはなれないと思いました。

新妻
仕事においても必然性を感じないまま“やらされ感”に身を任せてしまうと、どうしてもパフォーマンスは上がらないですよね。では、生徒に“我が事“になって競技に取り組んでもらうために、どのようなことを心がけましたか?

関山
私は常に“生徒が失敗するタイミング”を狙っています。こう言ってしまうと意地悪に聞こえるかもしれませんが、失敗すると、私が生徒に“問いかけるチャンス”ができるんです!
基本的に私は、①生徒に目標を宣言させて、②自主的に考え・行動させる。③成功したら褒めて、失敗した時には反省と改善点を問いかける…というような流れで指導をしています。

新妻
③の「問いかける」フェーズについて、その意図や内容、言葉選びなど、もう少し具体に教えていただけますか?

関山
「今日のレースの反省は?」「どこがダメだった?」「それを改善するには次に何をしたらいい?」というような具合で、失敗したことについての想いと次につなげるための策を、自分の頭で徹底的に考えさせるんです。生徒自身が出した打ち手は間違っていることも当然あるので、その後修正をかけることはありますが、まずは自分で考えてもらうことを徹底しています。

新妻
なるほど。PDCAサイクル(Plan(計画)→Do(実行)→Check(測定・評価)→Action(対策・改善)の仮説・検証型プロセスを循環させ、マネジメントの品質を高めようという概念)を高速回転させるようなコミュニケーションですね。そのような指導方針であれば、課題発見・解決能力が早々に身につきますね。とても参考になります。

関山先生が監督として初めて全国大会に出場したのちに作成された学園関係者へのお礼状

指導者・管理する立場の人に向けて

新妻
これだけの成果を“出し続ける”関山先生の指導の秘訣が分かりました。最後に、フィールドは違えど同じく子どもたちを指導する立場にある人に向けて、アドバイスがあればお願いいたします。

関山
自分の受け持つ子どもたちには“失敗しないような方法”を教えるのではなく、“失敗した時にどうするか”考えさせる時間を与え、指導者・管理する立場の人として壁打ちしてあげるほうが確実に伸びると思います。自分で考えさせて“納得”しないと、「次こそ頑張ろう!」と這い上がる力も生半可なものになってしまいます。本気で考え抜いて、自分で納得したからこそ、未来に向けて修正できるんです。陸上部の話で言えば、3年間という期間で常に一定のパフォーマンスを保っていられる生徒はそうそういません。そうであれば、最初のうちに小さな失敗をたくさん経験させて、学年が上がるにつれて修正の幅や大きさをより少なくしていく…右上がりにパフォーマンスが上がっていく形を目指しています。参考になれば幸いです。



学生・生徒に向けて

新妻
ありがとうございます。同様に、学生・生徒に向けても、学生生活をどのようなスタンスで過ごしていくと成長できるか、アドバイスをお願いします。

関山
私が携わった生徒に対して教えていることは、たとえ陸上をやめても長い人生で活きるもの…当たり前のことを当たり前にやりなさい、ということだけなんです。例えば、任されたことを責任持ってやること、感謝すること、周囲のことに気づいて率先して動けることです。陸上部に所属しているのであれば、これらのことをできない生徒はまず応援されませんし、社会人であれば生き抜くことはできません。 そして特に私が言っているのが「自分軸を持って物事を決められるようになってほしい」ということです。学生生活では様々な学びや指導を受けます。しかし、最終的にそれを受けて行動するのは自分自身です。人に流されてしまったり、人のせいにしてしまったりする生徒がいますが、それは“自分で決める”ことをしてこなかったからです。与えられた環境で、今できることを最大限創意工夫して自分で選ぶことができていれば、たとえ失敗しても人のせいにしたり、過度に悔いることなく、努力してきた結果を前向きに受け止め、次回に活かせるはずです。

「きちんと調べて、自分軸を持ちなさい。」私がいつも生徒に投げかける言葉です。

新妻
激動の社会で生き抜く“人間力”を、生徒に問いかける(気づかせる)形で学ばせている姿を見て、先生のもとでたくましい生徒が育つ理由が分かりました。関山先生、ありがとうございました!

今回、関山先生のインタビューには、ビジネスパーソンとして生きるうえで必要なエッセンスも散りばめられていました。
教職員一同、建学の精神に基づきながら、園児・生徒・学生への教育はもとより、地域のみなさまに愛される学園づくりにより一層励んでまいりますので、ご支援・ご協力のほど、よろしくお願いいたします。