学校法人茨城キリスト教学園

【インタビュー】コロナに負けない!それでも学生は地域活動を目指す!

新型コロナウイルス感染症の拡大は、学生・生徒・園児の日頃の活動や生活にも大きな影響を及ぼしました。地域に貢献したくても、活動ができない日々が続いたのです。今回は、地域貢献サークル『HEMHEM(ヘムヘム)』に所属する学生に、このコロナ禍をどのように乗り切ったか、なぜ地元にこだわるのか、本音を聞きました。

左から
経営学科 4年 木村 和也(きむら かずや)さん
文化交流学科 3年 藤井 陽生(ふじい ようせい)さん

サークルに入ったきっかけ

新妻
この度はお時間をいただいてありがとうございます。地域活動を主に活動するサークル『HEMHEM』の一員であるお二人ですが、このサークルに入ったきっかけは何だったのでしょうか?

木村さん
僕は、先輩方に「大学生は地域活動に参加したほうがいい(おそらく、就活に有利だからという理由で)」という誘いを受けてなんとなくHEMHEMに参加したことがきっかけでした(笑)。

藤井さん
僕も同じですね(笑)。就職活動の際のアピールになると言われました。

新妻
さすが長寿サークル。長年培われた新入生の集客力(?)がすごいのでしょうね。


地元が好きだと感じる瞬間

新妻
…しかし、“就職活動のネタ集め”ということだけが目的であれば、都内の大学に進学し地方よりも先進的な活動に参加するという道もあったはずです。お二人の中には、「地域貢献」「地元」というキーワードがあるのではないでしょうか。

木村さん
そう言われてみると…僕は長男なんです。なんとなくではありますが、「家に残らないといけない、そのほうがもしもの時にすぐに家族の力になれる」という潜在的な意識はありました。これは決してマイナスな話ではありません。長男であるということは、僕の人生を構成する一部の要素です。20年以上も住んでいれば、自然と愛着も湧いてきます。そんなところから、地元の力になれるような大学やサークルを選びました


藤井さん
僕も長男です。父親も長男だったので、“長男とはこうあるべき”ということは背中で見せてくれていた気がします。その中には、木村先輩と同じく「家を守る」という要素もありました。年の離れた兄弟は進学の際に地元を離れましたし。だからこそ、こうして地元に残り、できることを模索しているのだと思います。

新妻
お二人には「長男」という共通点があったのですね!地元・日立市での生活を軸にされているお二人ですが、どのような場面で「地元が好きだな」と感じますか?

木村さん
遠方に住んでいる親族に不定期で会いに行くのですが、高速で帰ってきて、「日立南太田インターチェンジ」の看板が見えてくると、地元に帰ってきた…とホッとしますね

藤井さん
よく言われていることですが、穏やかな気候、海も山もあり、常々住みやすい街だと思っています。木村先輩と似たような経験もしたことがありますね。ついこの間、青森に一人旅に行ったのですが、帰り道を走っているときは日立が恋しくて仕方ありませんでした(笑)。


新妻
どちらの話も共感です。私もよく同じような想いを抱いていますね。帰ってこれる地元があるからこそ、思いっきり外に遊びに行けるのかもしれません。



思うように活動ができない日々

新妻
さて、HEMHEMの活動の話に戻りますが、コロナ禍で本来やりたかった地元貢献のための地域活動がほとんどできていないとお伺いしています。

木村さん
そうなんです。僕が活動できたのは1年生の1年のみ、以降2年間は何の身動きも取れないまま4年生、しかも部長になってしまいました。

藤井さん
僕は入学してから一度も活動ができていません。

新妻
そうですよね。木村さん、1年生の時の地域活動で感じた、地域活動の意味・やりがいなどはありますか?

木村さん
地域活動の中でも、自分たちも出店ができる企画だとたくさんの学びがありますね。普段接することのできない人との横の繋がりなど、アルバイトとは違う出会いがあります。

藤井さん
出店を経験すると、楽しみながら売上や利益などのビジネス体験ができると聞いていました。地域活動はできずとも、文化祭ならチャンスがあるかな…と思っていたので、結局出来ずじまいになってしまって悲しいです。自分が卒業した高校の文化祭も、そこまで自由度の高い出し物はできなかったので、HEMHEMとして一度は模擬店を繁盛させてみたいです。

新妻
そうだったんですね。しかし、そのような状況も現在少しずつ解消されつつあるというお話もお伺いしています。

木村さん
そうなんです。一つは、長年HEMHEMと交流のある市役所の方が、少しずつ地域活動の案件をくださっていることです。これにより、藤井くんも先日ようやく初の地域活動に参加することができました。 もう一つは、まちづくりや地域課題解決、関係人口創出等に対する取り組みを若者の自由なアイデアで実践できる若者主体の組織「ひたち若者かがやき会議」に藤井くんを誘い、ともに活動を始めたということです。地域活動の経験値がほとんど無く不安だった僕のような想いを後輩にはさせまいと声掛けをしました。僕自身もHEMHEMの先輩に誘ってもらってこのような組織を知りました。



新妻
私もよく覚えています。ちょうど一年前くらい、私も個人的に「ひたち若者かがやき会議」の存在を知って参加しました。たまたま木村くん・藤井くんたちと同じグループで、このような会議に参加したきっかけについて話し合いましたね!それが今ではコアメンバーとして一緒に運営もしているなんて…なんとも不思議な感じです。

藤井さん
地域活動の醍醐味と似たようなものを感じました。異なる年齢層や考えを持つ大人の方と同じ地域課題に向き合って活動するのは、とてもやりがいがあります。難しい話だけでなく、生きる上での知恵(投資など)や、単純に雑談をしているだけでも楽しいし、時に勉強になります。



新妻
6月には私たちが一年前に出会った若者会議の2022年版が開催されます。多種多様な人たちが日立市に関する共通の問いについて語らう機会です。二人は今回運営側として参加することになります。ぜひたくさんの意見や想いを吸収して、日々の活動に活かしていただければと思います。最後に、お二人から一言ずつ今後の活動への意気込みがあれば教えてください。

木村さん
はじめこそ就活目的で参加したといいましたが、本当に活きる部分はあったなと思っています。それは、「大学時代に取り組んだことのネタになった」とか、そういうことではなく、地域活動を通して様々な人と話すうちに、話すことも、聞くことも上手になってきたという実感ができたんです。これからも培ってきたコミュニケーション力を活かして、学生生活を円滑に進めていきたいと思います。

藤井さん
街も、人も、少しずつ動いてきています。コロナを言い訳にせずに、できることから主体的に活動し、地域に貢献していきたいです。

新妻
木村さん、藤井さん、ありがとうございました!



立ち上げメンバーからのメッセージ

さて、今回はHEMHEMの活動を深堀りさせていただきました。実はこのサークルの立ち上げに携わったのは、地元有力企業・ユニキャスト代表取締役の三ツ堀裕太社長。今回は、現HEMHEMのメンバーの生の声を聞いてもらったうえで、大学生に向けた地域活動をどのように展開していくべきかお話を伺ってみました。


株式会社ユニキャスト代表取締役/本学経営学部経営学科特別専任教員教授 三ツ堀裕太さま


新妻
この度はお時間いただきありがとうございます。HEMHEMは三ツ堀さまが立ち上げられたというのは本当ですか?

三ツ堀さま
いいえ、厳密には違うんです。当時、私は大学院在学中に学生起業した経験を買われ、茨城キリスト教大学で兼任講師としてIT関連の講義をいくつか受け持っておりました。ちょうど経営学部が新設されたタイミングで経営学部の1期生の教え子たちに「経営を学びたいのであれば、実践の場として自分たちで会社をつくるなり、地域社会に向けて自分たちから積極的に関わるべきだよ」と、アドバイスをしたのです。当時から、学生発ITベンチャー企業としての使命感から、この地域の若者たちに対し、将来につながる何かを伝えていければと考えていましたので、社会貢献活動および人材発掘の観点から、2011年より茨城キリスト教大学の学生を中心とした「地域貢献サークル HEMHEM(ヘムヘム)」の設立とその後の活動を支援していくことを決めましたあくまで主体は学生たちであり、周囲の大人(単に成人という意味ではありません)は支援に徹するべきというのが設立当初からの考えです。 学生たちからすると”支援”という言葉では頼りなく聞こえるかも知れませんが、弊社のオフィスでもある地域貢献型シェアハウス『コクリエ』は、HEMHEMのみんなからの「部室が欲しい!せっかくならみんなで共同生活したい!」という声から始まった、1億円以上も投じた一大プロジェクトとなりました(笑)。


新妻
そうだったんですね。そんな思い入れもあるHEMHEMの現メンバーがこのように地域活動を捉えている様子をお伝えさせていただきましたが、率直にどのような感想でしょうか?

三ツ堀さま
今回インタビューに応じてくれた木村さんや藤井さんがというわけではなくて、学生は相対的に、地域活動を受け身に捉えている人が多いように感じます。言われたからやるというような姿勢ではなく、自分たちの興味・関心のあるものをしっかり考え、それに合った企画を行い、周囲を巻き込み、実施し、改善し、次に活かしていく。そういった取り組みを学生自らが主体的に行っていく団体であってほしいですね。

新妻
学生生活の時間は有限ですもんね。では、地域活動を通して学生に有意義な経験をしてもらうために、受け入れ側が意識すべきことなどはありますか?

三ツ堀さま
地域活動の重要ポイントとして、“若者(特に大学生)が主体的にきちんと参画し続けることと、活動そのものの継続性”にあると思っています。なので、継続性を担保するためにも、学生にボランティアと称して無償労働のような内容で参加を促すことは短絡的すぎてもったいないと考えます。初めのうちは無償でも興味を持って参加してくれていても、学べることややりがいなどのリターンに対し時間や労力などのバランスが崩れると、誰だって賃金の出るアルバイトを優先したくなってしまうものです。地域活動は非常に尊いもののはずですので、そこに目を向けてくれる学生たちには最大限の成長機会を提供しつつ、彼らと一緒に周囲の大人も学んでいく姿勢が重要です。また、少なくとも学生たちよりは周囲の社会人のほうが経済的責任を持つ立場にあるはずです。ですから、非営利活動であっても、参加メンバーの日当分くらいは出してあげられるのがデフォルトになってほしいですね。これは、私がHEMHEMを立ち上げたときに学生にも話しているこだわりどころです。“しっかりとした活動にしたいのであれば、必ず大人とお金の話をしなさい“と。誰だってカネの話はしたくないものですが、カネについて見て見ぬふりをしてうまくいっている地域活動を、少なくとも私は見たことがありません。

新妻
なるほど、その通りですよね。最後に、コロナ禍による行動制限も少しずつ緩和されてきていますが、大学生に向けた地域活動は今後どのように展開されていくべきでしょうか?

三ツ堀さま
先ほどのことを意識してくれるのが前提で、地域企業と学生のコラボがもっともっと活発になればいいなと思います。地域で活躍する学生をきちんとした体制で受け入れられれば、受け入れ側にも多かれ少なかれプラスの影響があります。企業と学生が地域課題という共通テーマを題材に信頼関係を構築していき、人材採用・育成の足がかりとしつつ、やがては企業活動の戦力となっていく流れを描いた地域活動。理想的な形のひとつだと思います。HEMHEMのOB・OGはすでに数百人規模となっており、多くの卒業生が県内企業で活躍しています。今後は先輩たちとの関係性も存分に活かしながら、様々な活動にどんどん取り組んで欲しいなと思います。



コロナ禍で地域活動ができずに不安だった学生たち。その不安に押しつぶされることなく、日立市とのコネクションを絶やさないよう、できる限りの行動を続けていました。現在、少しずつ活動制限が緩和され、それらの動きが実を結び、地域活動の実現に至っています。三ツ堀さまからの留意点も抑えながら、意欲のある学生には活動に励んでいただきたいです。本学は、学生の地域活動を全力で応援していきます。併せて地域の皆さまのご支援・ご協力も賜りますようお願い申し上げます。