学校法人茨城キリスト教学園

【インタビュー】
大みか学区コミュニティ推進会に聞く、“地域と茨城キリスト教学園”

私たちは、建学の精神に掲げる「隣人愛」に基づいた“ 共生の精神 ”を土台として、地域の皆さまとの開かれた交流を推進しています。

今回は、学園の所在地・大みか学区コミュニティ推進会
(以下、コミュニティ推進会)の皆さんに、地域と学園とのこれまでや、未来への展望についてお話いただきました。

コミュニティ推進会の活動拠点である「大みか交流センター」では、生涯学習事業や地域市民主体のコミュニティ活動が展開されています。

また、隣接している大みか小学校の図書室の役割も兼ねています。

この日も快晴の下、元気よく遊ぶ子どもたちの声が響き渡っていました。


お話を伺ったのは、こちらのお二人
大みか交流センター運営委員会 運営委員長/大みか学区コミュニティ推進会 会長 小松 信保さん(左)
大みか交流センター運営委員会 事務長/大みか学区コミュニティ推進会 事務局長 大上 三千男さん(右)
新妻
学園広報担当の新妻です。本日は地域のことに詳しいお二人にお話をうかがって、地域へのさらなる理解を深めた上で、これから私たちがどのように関わらせていただくことが望ましいのか、考える機会にしたいと思っております。短い時間ではありますが、どうぞよろしくお願いいたします。…まず単刀直入に、“大みか“はどのような地域と言えるのでしょうか。


大上さん
はい、よろしくお願いします。大みか地域は、もともと高齢化が進んでいる上に、工業地域としての時代が長かったため、日立市の他の地域と比べても、街として発展した歴史は短いのが特徴です。そのため、“人と人とのつながり”が薄いんです。


小松さん
私自身も結婚を機に30歳前後で大みかに住み始めましたが、その時点では地域との関わりはほとんど持てず、初めてつながりを持てたのは子どもが小学校に入ったタイミングでした。


新妻
そうだったんですね。では、そんな大みか地域と学園が交流を持つようになったのは、何がきっかけだったのでしょうか?


大上さん
やはり“大みか祭り”じゃないでしょうか。学園とのかかわりを話すために、大みか祭りが開催された経緯をお話します。

大みか祭りの前身には、2つのお祭りがあります。ひとつは「大みか納涼祭り」です。こちらは商店街メンバー(商店会)が中心となって開かれていたお祭りです。商店街のかき入れ時であるお盆過ぎの8月最終週に実施します。毎年この時期はとても暑く、そして、商店街での営業が終わった金曜の夕方から一気に準備を始めるので、なかなか大変なんです。その頃、商店街との連携推進を目的として「oOpi(オッピ:おもしろい、大みか、プロデュース委員会の略)」という団体が立ち上がり、納涼祭りのときにも数にして50~60名の学生がお手伝いをしてくれました。キリスト教学園との交流のきっかけです。立ち上げたばかりでの祭りにおけるサポートは本当にありがたかったです。

「大みか納涼祭り」が10回ほど安定して開催されるようになったころ、地域の子どもたちもお祭りに参加させたいという要望が出たことから、子供会が主催で「大みかきゅうり祭り」という祭りを立ち上げました。納涼祭りは駅前のメイン道路で実施されているのに対し、きゅうり祭りはより海沿いのエリアで開催されていました。まずは名称で目立たせるべく、祭りにも縁のある“きゅうり”を使いました(きゅうりは疫病を追い払うと言われており、神社へのお供え物として用いられる地域もあります)。もちろん、名前に用いるだけではなく、きゅうりのみそ漬けの販売や、きゅうりにちなんだゲーム(籠いっぱいに盛られたきゅうりの本数を当てるクイズなど)も実施されました。この時には、大学ボランティアサークル「港の会」、華道部、児童文化研究会の皆さんが運営に協力してくれました。

しかし、「大みか納涼祭り」を主催する商店会も高齢化が進み、年々運営することが難しくなってきていました。それでもこの町から祭りを無くしたくない、そんな商店会の想いを受け取り、私たちコミュニティ推進会が主となり新たな祭りを立ち上げることにしました。それが、納涼祭りときゅうり祭り、両方の要素を取り入れた「大みかまつり」です。納涼祭り20回、きゅうり祭り10回の開催を経ての決断でした。

ところで、この地域には祭りを実施する上でのマイナス要素があります。それは、“地域とゆかりのある神社が無い”ということです。

私は、大みかより海側の日立市久慈浜地域の育ちです。この地域には神社に紐づいた神輿がいくつもあったので、私は幼いころから祭りが大好きでした。しかし、ここ大みかにはゆかりのある神社がほとんどないんです。織物と星の神さまを祀っていることで珍しい「大甕神社」も、実はゆかりがあるのは久慈浜なんです。神社が無いことは何を意味するか。それは、神社にちなんだ神輿を作っての祭りができないということです。そこで、大きな神社が無いこの地域も祭りで盛り上げるために、「神輿」ではなく「“御”輿」を作ることにしました。「大甕御輿連」の誕生の経緯です。

大みか地域独自の御輿は、5回目のきゅうり祭りから取り入れられました。しかし、せっかく街を盛り上げるために御輿を作ったのに、御輿を上げられるような力のある若者がそれほどいませんでした。そんなとき、またしても力を貸してくれたのがキリスト教学園の皆さんです。キリスト高校のサッカー部をはじめとする近隣高校の運動部の皆さんが御輿を上げるのを手伝ってくれたことで、大みかの祭りをさらに盛り上げてくれました。

茨城キリスト教学園高等学校サッカー部
苦労もありましたが、過去の祭りを“大みか祭り”として昇華させることができて本当に嬉しかったですし、現在もこうして続けることができているのは、ひとえに茨城キリスト教学園の学生・生徒・園児のみなさんたちのサポートや盛り上げのおかげです。

交流が増えてきた今では、個人の声掛けで特定のサークルに手伝ってもらうという形でなく、大学の地域・国際交流センターにお願いをすれば、相当数のサークルや個人の皆さんに集まってもらえるまでの強固な関係性になりました。大みか祭りの開催にあたっては、提灯の飾りつけ、進行スタッフ、サークル主体での出店の運営、御輿担ぎ、園児による歌や遊戯の催しなど、数にして学生・生徒・園児・職員延べ225名の皆さんに、様々な面でお手伝いいただいています(2019年実績)。本当にありがとうございます。
2018・2019年度の大みか祭りの様子
新妻
そうだったんですね。神社が無いというマイナス面がありながらも精力的に盛り上げようとする皆さんたちの姿に心を打たれました。祭りを立ち上げる場面に我々が関われていたこと、地域の学校としても誇りに思います。…さて、お祭りをはじめ、地域の行事に参加する我々の学生生徒を見て、率直にどんな印象を抱かれておりますか?


大上さん
コミュニケーション能力が高く、真面目で、一生懸命な学生さんが多いですよ。突発的に行事に参加することになった学生さんでも、すぐに行事の趣旨を理解し、積極的に参加してくれます。年齢差や育ってきた環境の差がある地域の高齢者の方々とも、初めから心の壁無く話してくれて、感心しますね。

新妻
学生を象徴するキーワードをいただけて、参考になりました。地域のみなさんが感じる学生の強みをさらに伸ばしていけるよう、教育現場で活かしていきたいと思います。さて、最後になりますが、今後の茨城キリスト教学園に期待することを教えていただけますでしょうか?


大上さん
コミュニティ推進会としては、学園と関わる機会をもっと増やしていきたいです。この交流センターに来る人は、地域とのつながりを目的に集まります。しかし、同世代の中でしか交流を深められず、若い世代のみなさんと会話をしたいと切実に思っています。特に、男性は新しいコミュニティをつくるのが苦手な人が多そうなので、そこにコミュニケーション能力が高い学生さんに入っていただけたら、とても嬉しいですね。

大みか祭り以外にも、コミュニティ推進会では様々な活動を行っています。学生さん側から私たちの活動に積極的に手を挙げてくれることは、正直少ないです。ですので、推進会側が主体となって、私たちの活動や大みか地域のことを学生さんたちに知っていただく機会を増やし、交流を深めていけたらと思っています。

小松さん
この地域で生まれ育った、もしくは縁があって通学することになったのであれば、せっかくならこの近くで就職してほしいですよね。特に大学には専門性の高い看護などの学部もあるわけですし。学園への期待というよりは、大みかで育った若者を受け入れられるくらいの雇用を増やしてほしいという、市や県への期待・要望の気持ちのほうが大きいです。

また、お祭り大好き人間としては(笑)、来たる次回の大みか祭りをいかに盛大にやれるかというところで、学生さんたちの引き続きのご支援を期待しています。新型コロナウイルスの影響で、2年連続の中止となりました。この2年の間でも、ハード面の変化に伴う人流など、街の様子は少しずつ変わってきています。それでなくとも、2年も祭りが開催されないでいるので、次に今まで同様に動けるか、正直不安なところではあります。新しくなった大甕駅をはじめ、変わっていく街や人の通りに対応した「祭りの周知・盛り上げ策」を、普段大みか地域を見ている皆さんの柔軟な発想で出していただけたら、とても嬉しいです。また、後継者問題も喫緊の課題です。コロナが収束し満を持して祭りが開催できる環境になった際には、是非若い力をお借りできたら幸いです。一緒に大みか地域を盛り上げていきましょう!


交流センターでの活動一覧表を見ながら、学園とどのような連携ができるか会話するお二人

今回、小松さん・大上さんにお話を伺い、改めて自立した地域コミュニティを創っていくことの難しさを痛感しました。この度は取材にご協力いただきありがとうございました。今回のお話を受け止めながら、「地域の学園」として茨城県北の活性化やつながりの醸成に積極的に関わっていきたいと思いました。引き続き、学園の地域連携活動にご支援をいただければ幸いです。