茨城キリスト教大学

2018年度学位授与式 学長式辞

2018年度学位授与式を迎えるにあたり、はじめに、本日卒業・修了を迎える皆さんに、心よりお祝いを申し上げます。そしてご列席のご家族・ご親族の皆様、この日を迎えるまで、力強い支えになっていただき、加えて本学の教育にも多大なるご支援をいただき、誠にありがとうございます。また、ご来賓の皆様におかれましては、大変ご多忙の中ご参列いただき、心より感謝申し上げます。
さて、この大学が創立されたのは1967年のことでした。皆さんが在学中の2017年には、大学創立50周年と学園創立70周年を迎えることができました。この年には部活動・サークル活動の拠点である新しいクラブハウスも完成し、「Peace Truth LOVE—平和と真理と、愛」という学園のスクールモットーも定められました。そして昨年12月には、大甕駅新駅舎や東西自由通路の完成、学園新正門の開通により、皆さんの卒業前に、「駅近大学」の実現を何とか間に合わせることができました。来年の今頃には大甕駅学園口の開発も一段落し、街も活気に溢れていることでしょう。

半世紀以上にわたる歩みの中で、本学は数々の卒業生・修了生を送り出してきたわけですが、最近私にとって大変嬉しいことがありました。県外在住の第1回卒業生から、お手紙をいただいたのです。その方は、当時の本学園短期大学を卒業した後、1967年に新設の四年制大学に編入学し、ちょうど今から50年前に第1回の卒業生となりました。長く小学校の先生として勤められた後、現在は埼玉県の三郷市国際交流協会の会長をなさっておられます。広報紙で本学の近況をご覧になり、学生時代を懐かしく思い出されたそうです。今春卒業される皆さんに対する励ましのメッセージも寄せてくださいました。メッセージ本文は本学ホームページに掲載いたしますので、是非ご覧ください。

_卒業生祝辞はこちらから

古希、70歳を超えておられる第1回卒業生が、これからキャンパスを旅立っていく若き皆さんに向けて投げてくださった励ましのボールを、是非しっかりと受け止め、50年後には今度は皆さんが未来の卒業生にそのボールを投げてください。人生100年時代が近づいていると言われています。皆さんのこれまでの人生は全体の4分の1程度にしか過ぎないことになります。これからの長い人生を歩んでいくにあたって、本学での学びを含む学校教育が、皆さんにとって大きな意味を持っていることに、どこかで気付くことでしょう。

人生100年時代に向けて、肉体の寿命を単に伸ばすだけでなく、「健康寿命」というものを伸ばしてくということの重要性が叫ばれています。この大学の年齢よりも数年年上の私も、自らの健康を意識して、何かしなければと思い、昨年から始めたことがあります。ウォーキングです。仕事の合間を縫って、時間があるときには自宅から比較的近い水戸の千波湖の周りを歩いています。小さな子どもからお年寄りまで、実に様々な世代の人たちが、歩いたり走ったりしている場所に身を置くと、大いに触発され、自分もできる限り続けなければと思います。また、それまでに目を向けることが少なかった動植物にも目を向ける機会が増えました。季節や時間とともに姿を変える風景を楽しむことは、体の健康だけでなく、心の健康にもいいのではないかと思っています。ウォーキングの途中で卒業生に声をかけていただいたこともあります。

昨年11月後半のある日、ようやく習慣になった千波湖ウォーキングの途中で、小さな木に桜が花開いていることに気付き、はじめは目を疑いました。次に思ったのは、これは地球温暖化による狂い咲きではないかということでした。けれどもよく看板に注目してみると、これは「シキザクラ<四季桜>」という品種の桜であることがわかりました。看板によると、「秋から初冬にかけてと春にも開花する」のだそうです。「桜は春の花」という思い込みが打ち砕かれるとともに、ある聖書の言葉が心に浮かびました。旧約聖書「コヘレトの言葉」の、「何事にも時があり/天の下の出来事にはすべて定められた時がある」という一節です。この「定められた時」というのは、誰にも、何事にも同じタイミングで訪れるものではなく、実は人により、物事により、訪れるタイミングは千差万別なのではないかということに、「シキザクラ」は気付かせてくれました。

本日このキャンパスを旅立っていく皆さんの心の中の、今後の人生に対する希望と不安の割合を想像してみると、希望が不安を上回っている人もいれば、その逆の人もいることでしょう。希望に満ち溢れている人であっても、何かのきっかけで大きな試練に見舞われることがあると思います。そのような試練は、「自分にとっての定められた時」と思い、何とか乗り越えてください。また、これからの人生が不安で仕方がない人にも、それぞれのタイミングで「定められた時」である幸福が必ず訪れるはずです。

「定められた時」は人それぞれであるにせよ、試練や不安を自分だけで乗り越えるのはなかなか難しいこともあるかもしれません。そんな時には、このキャンパスに是非帰ってきてください。駅から断然近くなったこの大学は、建学の精神である「隣人愛」に基づき、教職員と学生との間の距離が近いことが伝統の一つでもあります。この「近さ」は、卒業生・修了生の皆さんに対しても何ら変わりがありません。私自身も、数十年前の卒業生との交流を今でも続けていますし、卒業生・修了生の訪問、相談に対しては常にウェルカムの姿勢を持ち続けているつもりです。この講堂の名前にもなっている創立者の一人であるローガン・ファックス氏は、この学園を通じて日本に「カウンセリング」を導入しました。もちろん、カウンセリングのプロになるには専門的な教育や訓練が必要ではありますが、カウンセリング「マインド」については、教職員が皆備えて、皆さんをこれからも暖かく迎えたいと思います。

そしてこちらからも皆さんにお願いがあります。悩める後輩たちがいたら、是非相談相手になってあげてください。これまでの学生生活で得た知見や、これからの新生活で得ることになる様々な経験を、後に続く人たちに伝えていただきたいと願っています。

最後に、本日旅立っていく皆様のご活躍とご健康を祈りつつ、私の式辞を終えることといたします。改めまして、皆様、卒業・修了、おめでとうございます。

2019年3月18日
茨城キリスト教大学
学長 東海林 宏司