茨城キリスト教大学

2017年度学位授与式 学長式辞

2017年度学位授与式を迎えるにあたり、はじめに、本日卒業・修了を迎える皆さんに、心よりお祝いを申し上げます。そしてご列席のご家族・ご親族の皆様、この日を迎えるまで、力強い支えになっていただき、加えて本学の教育にも多大なるご支援をいただき、誠にありがとうございます。また、ご来賓の皆様、大変ご多忙の中ご参列いただき、心より感謝申し上げます。

さて、皆さんのほとんどが入学した 2014年の春、私は学長としてのほぼ初めての仕事として、この場の入学式で式辞を述べました。そこで初めて、私の、そしてこの大学のモットーとして、「つながる大学であり続ける」ということを宣言しました。そしてこれまでの4年間、「グローバルなつながり」としては、台湾・インドネシア・フィリピンの大学との提携も実現しました。「ローカルなつながり」としては、日立市をはじめとした自治体との交流が深まってきたことに加えて、茨城大学など、地域の教育機関との連携も強まり、茨城県ではじめての大学・高専コンソーシアムも結成されています。学生の皆さんが様々な「隣人」と触れ合う中で、卒業後の人生の糧にもなるような経験を積むことができるよう、数々の「つながり」を作り続けてきたつもりです。

そして、この学園・大学の歴史において、2017年度は大きな節目の年ともなりました。1947年に誕生したこの学園は70周年を迎え、1967年開学のこの大学は創立50周年を迎えることができました。昨年秋の記念式典では、日立市長、茨城大学学長をはじめ、40年以上にわたってこの大学と交流を続けているアメリカ合衆国オクラホマ・クリスチャン大学の学長にもご参列いただき、お祝いの言葉を頂戴しました。

この大きな節目を機に、この学園は、これまでの歩みを振り返り、これからの未来に向けての宣言の意味合いも込めて、新たにスクールモットーを定めました。それは、Peace Truth LOVE、平和・真理・愛というものです。第二次世界大戦後間もなく創立された本学園の創設者の祈りは、世界に2度とこのような戦争を起こさせないということであり、世界の平和につながる「心の平和」を養う教育を、これからもこの学園は担っていかねばなりません。また、時に「常識」と言われるものをも疑い、真理を探究していくことは、いつの時代であっても大学をはじめとした教育研究機関の大きな使命です。そして、「隣人を、自分のように愛しなさい」という聖書の言葉にもあるように、他者に対して愛のこもった眼差しで接することができる人を、これからもこの学園は育て続けていきます。

この冬、「平和の祭典」と言われるオリンピックの冬季大会が韓国の平昌で開催されたことは記憶に新しいことと思います。皆さんにとって特に印象に残った競技は何だったでしょうか?怪我を乗り越え、2大会連続金メダルを獲得したフィギュアスケート男子の羽生結弦選手や、1人で金・銀・銅全てのメダルを獲得したスピードスケート女子の高木美帆選手など、今回のオリンピックでは多くの日本人選手が活躍しました。中でも私に一番強烈な印象を残した競技は、カーリング女子でした。以前は石を転がして氷をこするだけにしか見えず、どうすれば得点になるのかも、ルールもよくわからない競技でしたが、日本代表LS北見の試合を見続けるうちに、知らず知らずのうちにカーリングの魅力に引き込まれていき、徐々にルールも覚えていきました。ハーフタイムの栄養補給、いわゆる「もぐもぐタイム」や、試合中マイクで拾われた選手たちの「そだねー」という方言などが、メディアで繰り返し取り上げられたことで、以前はマイナースポーツと言われたカーリングの人気が高まっていったという面も確かにありました。けれども私の心を一番捕らえたのは、チームのスローガン通り、彼女たちが “Stay positive” の精神で戦い続け、どんなに厳しい試合展開であっても、彼女たちの表情がまさに前向きで明るかったことでした。LS北見のメンバーたちは、それぞれが様々な逆境を経験した後に新しいチームに集い、結成後8年で銅メダルという快挙を成し遂げたということです。チーム結成の中心になった本橋麻里選手は、このオリンピックでは、キャプテンでありながらも、リザーブ、要するに補欠となり、若い4人のメンバーたちの司令塔兼引き立て役となり、裏方に徹する決意をしました。3位決定戦で嬉しい勝利を収めた後、表彰式で5人揃ってジャンプで表彰台に上がり、メダルを首にかけてもらう姿には感動を覚えると同時に驚きも感じました。リザーブ、補欠にまでメダルが授与されるカーリングという競技は素晴らしいと思いました。試合に出なくとも、リード・セカンド・サード・スキップと共にリザーブも立派なチームの一員なんだというメッセージを感じました。

皆さんが卒業後に飛び込んでいく社会では、カーリングのように、リザーブもチームの一員としてしっかりと評価されるような場合もあれば、縁の下の力持ちはあくまでも縁の下にいて、なかなか光が当たらないということもあるかもしれません。スポーツに限らず、光の当たらない場所にいることで、人間は、落ち込んだり、やる気を失ったりしがちなものです。けれども、光が当たることを目的として人生を送るのではなく、地道に頑張った結果、たまたま光が当たることもあるという気持ちでいることが大切なのだと思います。特に卒業後すぐの段階では、誰もが簡単にリード・セカンド・サード・スキップにはなれないものです。リザーブの立場にあっても、他のメンバーたちとしっかりとコミュニケーションを取りながら “Stay positive” の精神を保ち続けること。本日このキャンパスを旅立っていく皆さんに、是非心がけてほしいと思います。

さて、先程述べた学園70周年・大学50周年を記念して、昨年には新しいクラブハウスが誕生しました。現在、大甕駅西口開発と連動した学園の新正門の工事が進行しています。残念ながら工事の完成は皆さんの卒業に間に合いませんでしたが、来年には新しい正門から、キャンパスを訪れる皆さんを迎えることができるはずです。施設・設備は新しくなろうとも、Peace Truth LOVE というモットーで示される私たちの建学の精神は変わりません。「つながる大学」は、卒業生の皆さんとのつながりも大切にしたいと思います。これからも私たち教職員は、皆さんの良き相談相手であり続けることをお約束します。もちろん、新正門の完成前であっても、皆さんの訪問は大歓迎です。気軽に帰ってきてください。

最後に、皆さんがこの大学での生活に心を満たされて旅立っていくこと、そしてこれからの皆さんの長い人生が、幸せに満ちたものであることを願って、式辞を終えさせていただきます。改めまして、皆さん、卒業・修了おめでとうございます。

2018年3月17日
茨城キリスト教大学
学長 東海林 宏司