茨城キリスト教大学

OBによる仕事の実践報告会(17/11/17報告)

学生に向けて地域で活躍する卒業生の「OBによる仕事の実践報告会」を開催。

子ども未来研究所では、地域で活躍する卒業生をお招きして、学生にお話ししていただく「OBによる仕事の実践報告会」を開いてきました。今年は、「保育者という仕事の中で考えること」と題して、東海村立百塚保育所保育士の鯉渕智里さん(2011年児童教育学科幼児保育専攻卒業)、のびろ学園池の川幼稚園教諭の根本さやかさん(2012年児童教育学科幼児保育専攻卒業)に、お出でいただき、学生70名余に保育者という仕事についてお話いただきました。

写真左:のびろ学園池の川幼稚園教諭の根本さやかさん
写真右:東海村立百塚保育所保育士の鯉渕智里さん

鯉渕智里さんのお話

東海村立百塚保育所保育士(2011年児童教育学科幼児保育専攻卒業)

 自身の母親が保育士で、私が病気でも私を置いて他所の子のめんどうを見に行く母に複雑な想いを持って育ったが、得意なピアノを生かせる仕事ということもあり、母に負けない保育士になってみせるというような気持ちもあった。東海村では、幼稚園と保育園の間での移動もあり、園が替わると振り出しにもどる感じでチャレンジし、これまで1歳児クラス以外はすべての年齢を担任してきた。それぞれの年齢でのむずかしさとおもしろさはあるが、年長児は達成すべき課題がはっきり形として見えるので、クラス作りに心を砕いた。課題を下ろすとき、子どもがそこまで育っているか、年長担任の経験のある先生に助言を頂きながら、一年間の育ちを支えていったので、小学生になったときの姿を見た感動も大きかった。公務員なので、保育以外に法律や住民サービス、電話対応などの研修もあり、職場では20代から60代まで幅広い年代が働いているので、先輩の助言も頂いて保育の仕事を続けてきた。

 保育士になったばかりの時は、子どもたちと全力でぶつかって、かわいいと思う余裕もなかったように思うが、7年目に入って、子どもが言い間違えをする姿も、何かをやり切った時の笑顔も、おなかが満たされた時の安らいだ姿も、毎日の暮らしのなかの当たり前の姿をかわいいと思える余裕が持てるようになった。子どもたちが、自分がしているように、泣いている友達を慰めているのを見て、自分の保育は嘘じゃなかったと思えるし、同僚と共感できた時、毎日の暮らしのなかで子どもとお日さまや大地、風を感じるとき、保育士をしていてよかったと思う。子どもから感染症がうつって体調を崩すことも多いし、子どもの怪我など咄嗟の判断力・行動力を求められることも多いが、同僚や保護者とのコミュニケーションを濃くし、いつも安定した保育のできる力をつけたいと思う。東海村は研修システムがしっかりしているし、育休も3年頂けるので、将来、結婚して子どもを持ったときも、体力があって求められるなら、この仕事を続けたい。家にいても仕事をしていても嫌なことはあるだろうけど、お母さんでもなく、奥さんでもなく認められる場は、生きる希望になると思うし、色々なことに興味を持って、好きな人・好きなことをたくさん作って、今目の前にある壁を乗り越えられなくても、誰にでも来る明日を信じて、この仕事を続けたいと思っている。

根本さやかさんのお話

のびろ学園池の川幼稚園教諭(2012年児童教育学科幼児保育専攻卒業)

 池の川幼稚園では、3歳児は小集団での育ち合いを大切にゆっくりじっくり育つ保育を、4・5歳児は混合クラスで、年中さんは年長さんに憧れて育っていく縦割りの保育を行っている。様々な障害のあるお子さんを共に育つ仲間として受け入れ、小学校への準備期間ではなく、一人ひとりが掛け替えのない幼児期をじっくり味わって育つ幼稚園を作っている。

 大学3年2月の教育実習で池の川幼稚園にお世話になり、自分の幼稚園教諭のイメージが変わった。それまで、幼稚園の「先生」は指導者、子どもを教え導く存在と思っていたが、池の川幼稚園の先生たちは、子どもと対等の存在で、全力で子どもと遊んでいた。鬼ごっこをする時、先生が力をセーブして捕まってあげると、子どもも先生もつまらない。先生も全力で逃げる時、子どもは真剣にいろいろ工夫して知恵・力を出し切り、成長する。そういう池の川幼稚園の先生の姿を見て、この園で働きたいと思った。

 子ども同士の喧嘩を仲裁する時、「ごめんね」を言わせようとするのではなく、だめなことはだめというけれど、「ばか」と言いたいときもあるのが人間だから、その気持ちを受け入れて「どうすればよかった?」と子どもに問い返すのが、池の川の保育。親は汚い言葉を使わせたくない、汚いことばはダメと教えるのがしつけと考えがちだけれど、人と人との関わりの中で、子どもも保育者も成長できる。

 年中長の縦割りクラスは、二人担任で、ペアの先生と子どもの様子や活動のプランは日常的に話し合っているが、月に1回はクラスの保育計画を検討する会議があり、やらせる活動ではなく、子どもがやってみたいと思う活動を提示するために、いろいろな意見がもらえる。4月には進級した年長さんがみんなで大きなこいのぼりを共同制作、園の空に揚げる、運動会では、年長さんはリレー、年中さんは玉入れ、クリスマスには「サンタさん来てくれるかなぁ」と自分の靴下をつくる、など年間の大まかな流れはあるが、子どもは毎年違うので、活動ごとにその子がやってみたいと思える内容になるよう知恵を絞る。おととし、年少を担任したとき、発達障害でべとべとしたものが嫌いでのりの活動はしたくないお子さんがいたが、砂遊びを喜んでしていたので、タンポンでポンポンとのりをつけて、色砂をまいて砂絵を描くという活動にしたところ、楽しく靴下が作れた。ひとつの活動の中でも、楽しんでいることは子どもによってそれぞれなので、やらせるのではなくて、やってみたいなと思える活動を提示できるように考えている。

 運動会では、大きな集団に慣れていない年少児や障害のある子が、どう参加できるか工夫しながらプログラムを作っていく。池の川の運動会を見た親から「運動会らしくない競技だったけれど、やらせられる、やらねばならぬ活動ではなくて、やってみたいことができるのが、ありがたい」と言ってもらい、うれしかった。年少の担任だったとき、子ども同士のトラブルが起きた際に、ある親から「池の川はひとりひとりの子どもを大切にしてくれると思ったから入れたのに、3歳で友だちと関わるのは無理なのではないか」とご意見をいただいたが、実際に、子どもが遊ぶ場を見てもらい、3歳は並行あそびをしながら関わりあっていること、そのなかで育ちあいが生まれることをご理解いただいた。保護者との関わりも、池の川の保育の中で、子どもが育っていることを実感してもらうことが、基本になると思う。結婚しても、人と人として子どもと向き合える保育の仕事を続けていきたいと思っている。

保育者として真剣に働いている二人の先輩から直接お話を伺い、幼児保育専攻の学生たちは用意した紙に溢れるほどの感想を残してくれました。間近に迫っている実習、さらには就職活動への覚悟も生まれたようです。

参加した学生の感想

  • 二人の先輩は、自分を大切にしているし、毎日をしっかり生きている印象で、楽しいだけではない大変な仕事をして、キラキラ輝いている先輩は、本当に素敵だと思った。
  • 現役で働いている先輩のお話を聞いて、保育士に求められている姿勢や能力について知ることができた。今まで授業で学んだり、本で読んだりしてなんとなく知っていると思っていたことも、先輩から現場のお話として聞くことで身に染みて感じられた。
  • 職場に話し合いをする場、アドバイスしてくれる先輩がいるのがいいと思った。上司からのアドバイスを受け止め、それについて話し合える環境があるのがよい。
  • 子どもたちとの関わりを楽しみ、四季を感じ、自分の好きなことを保育に取り入れて、どの子も楽しめる活動を作っていくことが、保育者という仕事の魅力だと思った。
  • 経験と積み重ねがあって、7年目で子どもをかわいいと思うゆとりが持てたという言葉は、働いているからこそ出たものですごく心に残った。…子どもも成長できるし自分も成長できる仕事は中々ないと思うので、やっぱり私はこの仕事がしたいと再認識できた。
  • 自分の思いを子どもに押し付けるのではなく、こどもたちがやりたいと思える活動を考えるということ、保育者が全力で遊ぶことで子どもが成長するということを聞いて、なるほどと、とても納得した。
  • 障害を持つ子との関わり方は、色々な授業で学んできたけれど、お話を聞いて、無理にみんなと同じことをやらせるのではなくて、工夫してその子に合った関わり方を探すのが保育者の仕事なのだと思った。
  • 今、自分が授業で書いている指導案は、どうしたらこどもたちが楽しめるかとは、考えていなかったことに気づいた。実習前にペープサートなど子どもが楽しめる小道具を用意するだけでなく、子どもとの接し方も考え直しておこうと思った。
  • 実習中にも自ら質問をして学ぶようにとアドバイスをいただいたので、今からコミュニケーション力を上げるように意識したい。
  • クラスの作り方も、保育の方針も、保護者や職場の人との関係の在り方も、園によって違いがあるとわかり、よく調べて自分の目指す保育者になれる園を探したいと思った。