グレッグ・アーウィン氏講演会(文学部児童教育学科主催)のご報告
グレッグ・アーウィン氏 『美しい日本の心を大切に』
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児童教育学科主任 佐藤希久雄
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2010年10月23日(土)、児童教育学科ではローガン・ファックス記念講堂を会場に、〈童謡の伝道師〉グレッグ・アーウィン氏(以下、親しみを込めて「グレッグさん」)をお招きして講演会を行いました。タイトルは『美しい日本の心を大切に』。
そもそも私がグレッグさんの活動を知ったのは、3年位前に、たまたま車の中で聞いたラジオ番組がきっかけでした。まず日本の童謡を自ら英語に訳して歌う、というユニークな活動にちょっと驚きを覚えました。さらにそのお話をうかがい、日本の童謡というジャンルの特殊な「生い立ち」を踏まえて、その「心」をも訳出しようという志にすっかり魅了されてしまったのです。 |
ぜひ一度グレッグさんをこの茨城キリスト教大学にお招きして講演会を開きたいと交渉を始めたのが昨年の秋。好天に恵まれたこの日、ついにその本番を迎えました。
まず控え室を設けた本学3号館に入ったとたん、ホール中央に据えられた〈ムーン〉の彫刻に驚きの声とともに足を止めました。グレッグさんは自宅にいくつかのコレクションを持つほど彫刻が大好きとの事。しかもその作者が今、JR大みか駅からお出迎えの車を運転してきた本学科の信太進教授本人とあって大感激。こんな記念撮影となりました(写真はグレッグさん提供)。 |
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【大学3号館にて】 |
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中央、彫刻の中がグレッグさん。左端がピアニストのデイビッド・チェスターさん。右端が彫刻の作者の信太教授。 |
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この写真を撮るのにも「ここから顔を出したら作者に失礼ですか?」と信太先生に尋ねる気遣い。開演前の打ち合わせから、終了後のスタッフとの歓談まで、常に周りの人間に細やかな気配りを忘れない、グレッグさんの素敵な人柄がうかがわれました。
さて、講演会はまず1曲、日本語と英語で、おなじみの唱歌「ふるさと」を歌って始まりました。その後は、グレッグさんの生い立ちから、童謡のお話、そして私たちがより良く生きるためのヒントにいたるまで様々なお話(もちろん流暢な日本語です)。お父さんがアルコール依存症であったこと、意外にも、小学校から高校時代まで周囲から「いじめ」に遭っていたこと、そしてやがて歌や演技の中に自分の才能を見つけ、「自分らしさ」に目覚め自信を取り戻したことなど。また「日本」との出会い、その後のハワイでの生活、来日することになったエピソードなど、お話は次々に繰り広げられます。
それらのお話を貫いて、ひとつひとつの事がらや、一人ひとりとの「出会い」を大切に思う気持ちが私にはひしひしと伝わってきました。グレッグさんは、「みんなと違うところがあるといじめられる。でもみんなと違うところが〈自分らしさ〉。」「人と違うところがあることのすばらしさに気付かせてくれた〈いじめ〉に、今は感謝しています」とまで言われるのです。
そして、日本の童謡との出会い。訳詞に苦労して会う人会う人にその意味を尋ねると、日本人は皆童謡について話しているうちに、また歌っているうちに、顔が優しくなるのだといいます。それは、童謡の中にも日本人の心の中にも、思いやり、心遣い、そして愛があるからだとグレッグさんは言われます。そしてそれを最近の日本人は忘れているのではないですか、とも。
訳詞の苦労話の中には、動植物の名前のニュアンスの違いについてのお話もありました。例えば「赤とんぼ」は「レッド・ドラゴンフライ」。まるで恐ろしい生き物のようです。また「夏の思い出」の清楚な花「水芭蕉」は、英語では「スカンク・キャベジ(cabbageはキャベツのこと)」となるのだそうです。そして「それが、“夢見て匂っている”!」と皆を笑わせました。
このお話から私はひとつのことを思い出しました。今回は歌われませんでしたが、唱歌「虫のこえ」には様々な秋の虫が登場します。コオロギやスズムシの「声」を私たち日本人は美しい音色(ねいろ)として鑑賞し、文学や音楽の題材ともしてきました。しかし意外なことに、欧米人にとって虫の声は、単なる「ノイズ」に過ぎないのだとある学者が言っていました。それぞれの文化の中でそのような「聞き方」が脳の中に形成され、容易に変わることはないのだといいます。
ただ言葉を辞書によって置き換えただけでは理解が難しい、異なる美意識を持つ文化間での翻訳の難しさがここにあります。私たちが美しいと感じるものを、あちらでも同じように感じてもらえるだろうか…。しかし、美しいメロディにのせた言葉は、心から心へ伝わるもの。グレッグさんのお仕事によって、多くの国々で日本の童謡が歌われるようになれば、きっと「美しい日本の心」が深く理解されるようになると思うのです。
さて、様々なお話の後に、後半は次々と英語ヴァージョンの童謡を披露。グレッグさんの表現力豊かな歌唱を支える見事なピアノ伴奏はデイビッド・チェスターさん。全て伴奏はデイビッドさんのオリジナル・アレンジとのこと。
残念ながら、その響きを文章で適切に再現することは出来ません。まあグレッグさんのCDや英語版童謡の絵本も発売されていることですし、どうぞそちらをお買い求めいただければと思います。
ごく一部ですが、学生から寄せられた感想文からいくつか拾ってみたいと思います。その言葉は様々ですが、グレッグさんの優しい人柄に触れ、異文化で育った彼から、改めて日本の文化や風土のすばらしさを新鮮な気持ちで気付かされたことへの感謝が述べられています。
学生の感想
(幼児保育専攻3年男子)
話を聞く前は童謡に対して学校で歌う歌のように思っていたのだが、童謡の中には人や自然への優しさや愛が含まれているということがわかった。グレッグさんの歌も心にじんわりと響いた…
(幼児保育専攻3年女子)
ふだんは当たり前過ぎて意識していなかったけれど、グレッグさん(外国の方)に、日本をこんなに良く思われているのはうれしいことだと思った。日本の歌を英語で歌ってもとても響きが美しいなあと感じたし、グレッグさんは本当に日本の歌を愛してくれているのだなと思った…
(児童教育専攻1年女子)
日本語で歌う時と比較すると、英語で歌う時の方が歌に広がりがあったように感じた。「ふるさと」の最後の「my country home」の「ホウム」の音の響きがとてもきれいで気に入った…
(幼児保育専攻3年女子)
英語の歌詞もすばらしいと感じたが、やはり日本の童謡は日本語の優しさや美しさ、季節感などが盛り込まれているからすばらしいのだと感じた…
(幼児保育専攻3年女子)
同じ童謡でも、日本語と英語では異なる曲のようにきこえるのだなあと思った…
(児童教育専攻1年女子)
「七つの子」は私のおばあちゃんがよく歌ってくれた童謡で、懐かしさに熱いものがこみ上げてきました。童謡は少し切ないですね。小さいころの思い出とともに、心にこびりついていて離れない記憶がぶわぁっとあふれてきました…
(児童教育専攻1年男子)
知っている童謡が、こんなに美しくアレンジされていてびっくりした。とくに「雨ふり」のあのノリが好きになりました…
(児童教育専攻1年女子)
童謡を聞いて心が優しくなった気がする。童謡が英語に訳されていても、その優しい響きは変わっていないと思った。今日の講演会に来ていなかったら知らないままだった曲もあったと思うので、来てよかった。自分の生徒や子どもにもしっかりと伝統を伝えて行きたい…

すばらしいお話と歌声を聞かせてくださったグレッグ・アーウィンさんに児童教育学科一同心より感謝いたします。〈童謡の伝道師〉として、これからもますます童謡の心を私たち日本人に、そして世界の国々の子どもたち、おとなたちにも届けていただきたいと思います。
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(本文に使用した写真は、【大学3号館にて】のグレッグさん撮影分以外、すべて本学で撮影しました) |
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