茨城キリスト教大学「子ども未来研究所」開設記念講演会「口の中から子どもが見える」開催のご報告
子どもの口腔発達が及ぼす様々な課題について、ユーモアを交えた元開先生のお話に、フロアは笑いがたえませんでした。
| 講 師 | げんかい歯科医院 院長 元開 冨士雄 氏 |
| 場 所 | 茨城キリスト教大学 8号館大講義室 |
| 日 時 | 2010年6月5日(土) 午後1時30分〜3時 |
| 参加人数 | 一般の方31名、付属幼稚園関係者21名、学生127名、合計179名 |
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| 元開 冨士雄 氏 |
・虫歯の話
口の中の話というとどうしても歯の話、とくに虫歯の話になりがちだが、あまり虫歯の話は好きではない。しかし簡単に虫歯の話を説明する。虫歯はどうしてできるのかといえば、唾が歯を溶かす。虫歯は唾が作るのである。口の中の菌が酸を作り、糖分が入ると3分以内で歯が溶けだし、戻るのに20分程度かかる。糖分の多い飲み物などは、よく歯を溶かす。
また一日の食事の時間も関係があり、短くても長くてもいけない。食事の回数も多くなれば虫歯が出来る。何回も食べる子どもは退屈だから、だらだらと食べる。ここから生活リズムの乱れが見えてくる。
子どもの生活リズムの破たんが、子どもの口の病気を作っている。多くの場合、親がその原因を作っていることが多いので注意していただきたい。
・口の発達
口の発育不全、過敏、鈍感、敏感すべて原因は一緒で、口の発達は原始反射をどう捨てられるかにかかっている。これがうまく進まないと、口の発育不全につながる。口は筋肉のかたまりなので筋肉の影響を受けやすく、歯並び、呼吸とすべてつながっている。
幼児に多いDeep Bite(デーィプバイト/過蓋咬合)噛み合わせが悪く何にも噛めない子どもの場合は、食べやすく流しこめるような食べ物を用意してあげるようにアドバイスしている。
幼児期のDeep Biteは呼吸に問題を起こす場合もあり、注意が必要。まれに突然死につながる可能性もあるので、親は横で寝る事が大切。息がしやすいように、布団を少し斜面にしてあげると寝やすくなる。また、噛まない(噛めない)ために歯周病や肥満になりやすいと
いう傾向がある。
・同じものを見て共感する
子どもを育てるうえで大切なことは、同じものを見て心を通わすことで、指差しも大切。子どもが「わっわ」と言って指をさしたら、同じ方向を見てあげて共感することが育ちにつながる。今のお母さんの中には無視して携帯電話をいじっている人がいるが、それでは子どもの心は育たない。
・偏食がないということは
偏食がないというのは、ある意味「口がバカ」になっているということも場合によってはいえる。偏食がないということは良いことのように思いがちだが、味が本当にわかっているのかという思いもある。つまり、口が鈍感になっていて、なんでも違和感なく食べてしまうということもある。そういう子はあまり「美味しい」ということは言わない場合が多い。
そこで、口をマッサージすることによって味覚の変化に気が付き、好き嫌いのある子どもが増えてくる。そして「美味しい」という言葉がでてくる。
・生きる力を育てる
幼稚園に入ってから歩けるようになったお子さんがいますが、幼稚園では歩いているのに家に帰ると「ふにゃ」となって歩けなくなってしまう。なぜか。それは、歩かなくていい環境に家がなっているので、いつまでたっても歩けないのだ。歩く機能を獲得するためには、今ある機能を使わなければうまくいかない。そのためには、どういうふうに使うのか人に言われたりやらされたりしたのではうまくいかない。本当に必要なことは、歩きたいというような心が大事。歩くことが必要になるような環境を整えてあげる事が大切。そうすれば伸びていく。共に生きるという周りの視線が子どもを励まし、自ら歩こうという意欲を育てる事が、生きる力につながっていく。
もう一例、生理的に食べられない子どももいる。3歳になるお子さんだがチューブで栄養を入れている。元気はよく、口も問題はない。では何故食べないのか。それは、生まれてからずっとチューブで生活しているため。このお子さんは親に抱かれたことがない。
親はあまりしゃべらず、言葉かけも足りない様子。ゆっくりスキンシップを取りながら子どもに触れていきましょうとアドバイスし、親に「抱けますか」と聞いたら頑張ってみますとの返事。おそらく親に抱かれるようになれば、きっとこの状態を抜け出せると思う。
・口を育てる
赤ちゃんの口は、オッパイに適した機能を持っている。それが成長するにつれ、口の構造と機能を大きく変化させていく。オッパイをすっていた狭くて小さな口から、たくさんの食物を入れ、自由に動く舌を持った口に変化させていく。「すう口」から「食べて話す口」に変化していく。このような口の変化は、子とも達が自然に獲得していくと思われがちだが、このような機能の変化は、日々の生活の中で学習する環境によって獲得されていく。
赤ちゃんが、手にしたものを次から次へと口に入れ、よだれを流し、手づかみで食べて口に入れては吐き出すことの繰り返しをする中で、口の機能を向上させていく。
また、口が育つということは心の発達にも関係する。子どもにとって口は、体全体にも影響を及ぼす大切な生きるための根源的器官といえる。
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| 講演の様子 | 会場の様子 |
【学生の感想より一部抜粋】
◇看護学部看護学科の学生- 元開先生が“口は命を守る”ということについて話しをされた時に、私は特に衝撃を受けた。私は口・歯を“食べるためのもの”と考えていたが、“食べる”ということは“生きる”ことに直結することであり、その“食べる”という行為は他でもなく“口・歯”でなされていることなのだと、改めて考えれば当然であるが、いかに重要であるかわかった。
他にも、“スポーツ選手は噛み合わせが大事”ということは知っていたが、講演を聞いてそれがどういう理屈であったのかを知り、そこでもまた今まで知らなかった歯の機能を知ることが出来た。
元開先生のお話は、歯・口やその機能だけに留まらず、成長・発達や生活などとも結び付けられており、とても奥が深くて興味深く夢中になった。自分でなにかについて考える時も、そのひとつや関連していることだけでなく、、多面的に物事を捉え、考えていかなければいけないのだと改めて学んだ。 - 「口をみる」というのは虫歯だけでなく、舌や口内炎、口の伸び、アゴなど色々と着目する点があるということに驚きました。また、現代子どもの虫歯が減ってきているということ、そしてそれが歯周病につながっているということ、DeepBiteの増加が将来どのように影響がおよんでくるのかを学ぶことが出来、恐いとも感じました。
- まず、歯って本当に大切なのだと感じました。ムシ歯がなければいいやというぐらいに考えていたけれど、歯はいろいろなことを表しているのだと知り、歯を大切にしなければいけないと感じました。子どものムシ歯は減っているけれど、50歳をすぎた頃から歯周病で歯が減る人が増えるというのを知り、ムシ歯がなければ安心というわけではないということに驚きました。歯は噛み方や噛む回数など食事の取り方で発育が変わり、また歯の構造により食事が制限されてくるというのを知り、今回学んだ知識を生かしたいと思いました。
今回、使わないチカラは衰えるということや機能を獲得するためには、機能が生活に密着しなければならないということなど様々なことが学べ、とても勉強になりました。
◇文学部児童教育学科幼児保育専攻の学生
- 地球上の生物で、「共同繁殖」が可能なのが、ヒトとアリ、そして微生物だけだということにも驚きました。共同作業をすることによって、進化と発達を早めてきたなんて、凄いなと思いました。捕食の役割が手に移ったことで、味覚と触覚が発達し、食行動にも個食から共食へ、集団での採食に変わり、食べ物を分配するまでに変化したことも、凄いことだと思います。
- 今日の講演を聞いて、本当に子どもの口の中から日頃の生活や環境が見えてくることがわかった。急に虫歯ができた子の背景には、その子の身近な環境の変化が隠れていると知って、歯にこんなにもわかりやすく現れるのだなと感じた。
歯科検診の時や歯医者に見てもらう時くらいしか歯に注目していなかったが、親は普段から口の中を見て、変化に気づく必要があるのだと思った。
偏食はいけないことだと思っていたが、偏食がないのはある意味「口がバカ」なのであると言っていて、偏食がある程度あるということは、苦いなどの味覚がきちんとわかっているのだというプラスの考えもあるのだと思った。 - 口の中を見ることで、その人の特徴が分かってしまうのはすごいと思いました。下あごが小さく、上の歯が下の歯を覆ってしまう「DeepBite(過蓋咬合)」の人は、寝つきが早い、食事に時間がかかる、横向きで寝る、食事中に水分補給が多い、あまり噛まずに飲み込んでいるため太りやすいという特徴があり、体が硬く、なめらかな動作が苦手でゆっくり動けないけれど、早口といわれているそうです。また、左右両方の歯で咬むことが大事だけれど、ガムなどを食べて頬や舌を噛んだ場合は、噛んだ側の噛み合わせが苦手ということが分かるチェック方法は簡単に自分の噛みグセを知ることができるので良いと思いました。このように、口の構造に問題があると、食事がしにくい、発音が不明瞭などの問題がでてきます。


