総長からのメッセージ

私の今までの人生で3度、忘れられない瞬間がありました。1963年11月22日、アメリカの元大統領ジョン F.ケネディー氏暗殺の一報を聞いた時です。自分がどこで何をしていたか今でもはっきりと覚えています。2001年9月11日には、NHKの実況中継でアメリカはニューヨークのワールド・トレード・センター第二ビルに、2機目の飛行機が激突するという、信じ難い光景を目の当たりにしました。この2つの悲劇は、アメリカ人である私の心と生き方の根底が揺るがされるほど重大な出来事でした。
そして3つ目の瞬間は、2011年3月11日の東日本大震災です。日本の歴史上最大の地震と津波により、4月27日現在で14,500人を超える死者および11,000人を超える行方不明者が出、いまだ130,000人(当初245,000人以上)を超える方々が避難所での生活を強いられています。そしてこの日から約50日間で、マグニチュード5.0以上の余震は515回を超えました。私はこの大きな苦難を、日本の愛する家族や友人たちと共に経験したのです。
地震の時、私は自宅の裏手の小さな畑で作業をしていました。見ると自分の家が上下左右に大きく揺れ、近くのアパートの屋根瓦が次々と跳ね上がっては屋根を転がり、駐車場へと落ちていきました。今までで一番の恐怖を味わったといっても過言ではありません。そしてその直後から、水、電気、ガスといったライフラインが途絶えた中での生活が始まりました。暗く長い夜、絶え間ない余震、外との通信手段が途絶えたことによる孤独感、加えて食料と水の確保はまさに深刻な問題でした。
ライフラインが復旧すると、この震災がいかに巨大なものであったかが徐々に分かり始めました。地震、津波という二つの自然災害に加え、福島原子力発電所の事故の問題は、より大きな影を落としています。私たちは今、まさにこの三重苦からの復興を目指しています。日立市周辺ではこの道のりに多少の時間を要することと思いますが、東北地方に比べれば状況は格段に良いでしょう。しかし現在、第4の問題が起きています。風評被害による市場の崩壊は国内全体を揺るがし、海外でも日本製品に対する恐怖感が広がっています。
このような経験は、しないほうが良かったでしょう。しかし今回、私は3つのことを学びました。既に知識として知っていた事ですが、この経験を通してそれが自分のものとして消化でき、大切な教えとなったのです。
第一に、人生の価値とは、自分の立場や所有物にあるのではなく、人生そのものである、ということです。私は改めて、この震災で失くしたものが物だけで、自分や愛する者たちの命が残されたことに感謝します。日々生きているだけでありがたいことなのです。以前、私にとって問題と思えたこと(車の故障、騒がしい学生、自動販売機でおつりが出てこない等)が、本来いかに些細なことであったか。多くの問題は人生の価値から考えれば小さいものであると気づかされました。
第二に学んだことは、他者の価値です。この震災で見知らぬ者同士が互いに助け合ってきました。家族や友人と何日も連絡がとれなかった時、彼らに対して全く新しい価値観が生まれました。良い隣人がいること、良い隣人となることの大切さを学び、更に感謝することができました。私は長年「あなたの隣人をあなた自身のように愛せよ」という、二番目に大切なイエスの教えを信じ、教えてきましたが、今、隣人を自分のように愛することの大切さに改めて気づくこととなりました。
そして第三に、これはイエスの第一の教えに戻りますが、「心を尽くし、思いを尽くし、力を尽くして神を愛すること」の重要性を学びました。自分の家が大きく揺れているのを見てまず思ったことは「神様、私にこんなことをしないで下さい!」でした。
神は、私に対してそれをしたのではありませんでした。神は、私がもっと神を信頼するようにと、この経験を用いられたのでした。神はすべての支配者です。たとえ私が嵐や地震、あるいは他の理由で命を落としたとしても、神は私を愛しておられ、私の死を通して残された者たちに良いものをもたらしてくださること、そして私は神と共に、永遠の時を過ごせることを信じています。「どうしてわかるのか」と疑問に思われるかもしれません。私には神に対する信仰が土台にあって、その答えは人生の中で何度も、さまざまな方法で証明されてきたからです。
子供の頃習った讃美歌の歌詞にもその答えがあります。
"Jesus loves me, this I know, for the Bible tells me so."
(イエス様は私を愛しておられる。なぜなら聖書にそう記されているのだから。)
2011年5月
ジム D. バットン