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特集
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2007.10.01 岡田典夫 特集 No.001 本学の風景

特集 No.003 ぜいたくな空間と時間 ― 保育実習指導室ってどんなところ? 4年間かけて保育を学ぶ意味は? ―

掲載日:2008年5月4日
責任編集 岡田典夫・池内耕作

以下の特集記事はPDF版(694KB)も作成しています。(資料ページにも掲載しています)

 

「隣は何をする人ぞ」

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一年ほど前、わが(岡田)研究室の隣に「保育実習指導室」が引っ越してきました。それとなく観察していると、ここは学内でも屈指の、「賑わい空間」です。

入口の扉は、昼休みを除いて一日中開け放たれています。学生や教職員の出入りは、朝からひきもきらず。時には、長い行列ができることさえあります。そうです。ここは、幼児保育専攻の学生が、4年間に最低でも3回、多ければ4回ほど受ける、保育実習やボランティア実践の、手続き、指導、助言、フォローなどを受け持つ、大切な「サポート・センター」なのです。

手続きや必要書類の提出にやってくる学生の表情には、ときに不安や焦りが見えることもあります。でも、一見いかめしい「指導室」で行われていることが、「指導」という以上に、「助言」や「相談」や「励まし」であることは、すぐに分かります。なぜって、この部屋を出てくる学生の表情は、いつも自信と希望に満たされて輝いているように見えますから。

では、学生自身から見た「指導室」とは、どんな場所なのでしょうか。飛田隆先生にまとめていただいた学生たちによるイメージを紹介してみましょう。

  • 実習前から終了まで事務的なサポートはもちろん、それ以外の時も相談にのってくれる。
  • 実習でわからないことを教えてくれる。悩んでいたらアドバイスしてくださった。
  • 親切で親身になって相談にのってくれるところ。
  • 紙芝居、絵本、実習に役立つ本がいっぱい置いてあるところ。
  • 初めは保育実習指導室に近寄りがたい感じだったが、行ってみると意外と楽しく参考になる本もある。
  • 保育実習指導室は厳しそうなイメージがあるが、そこにいる助手さんはフレンドリーで優しい。
  • かわいい人形があってなごめるスペース。
  • 実習指導室のドアがいつも開いているのが魅力。ドアが開いていると親近感がわきます。
  • とても重要な場所。
  • 保育実習や施設実習等に関しての疑問を解決してくれるところ。

ところで、みなさんは、朝日新聞出版『2009年版大学ランキング』(2008年5月1日)のなかで、「相談相手がいる」大学として、本学が全国一位にランクされたことをご存じですか。これがけして過大評価でないことは、保育実習指導室を見ているとよく分かります。ここはまさに、「相談相手がいる」空間、親身な指導と助言をとおして、自分を発見する手がかりが不えられる場所、そしてなによりも、学生にとって安心できる大学生活の拠点(居場所)なのです。

石川さん・白澤さんから河野さんへ

――この実習指導室を、発足の時点から担当して、4年間にわたる暗中模索を重ねながら立派に育てあげてきた若い助手が、石川泰子さんです。昨年度には、白澤美保さんという同僚も加わって、全学年の実習と最初の卒業生のサポートにあたりました。お二人が、任期のため、惜しまれつつ退職されるにあたって、大畠孝子前専攻代表と、お二人自らに、体験を踏まえた貴重なメッセージをいただきました。

贈る言葉

教員・幼児保育専攻前代表 大畠 孝子

この3月で、保育実習指導室の石川さん、白澤さんのお仕事の任期が満了となり、お別れの時期となりました。4年間、石川さんには、幼児保育専攻の開設と共に立ち上がった実習指導室において、対外的な連絡、実習にかかわる書類の作成や学生の支援などにお骨折りを頂きました。白澤さんには、4学年がそろった時期に多くの文書、教材の整理や、40周年の記念講演会の準備等にもかかわって頂きました。学生に近い視点から意見を述べてくださり、実習も滞りなく実施することができました。お蔭様で、4年生は、保育士を中心に新しくこの4月から社会に飛び立っていきます。お二人の言葉をここに頂きました。見えない糸のつながりを信じて・・・。これからも、学外から実習指導室を見守ってください。後に続く後輩の仕事の様子を、時々眺めに来てくだされば幸いです。

石川泰子さんより

保育実習指導室は特殊な場であると、私は思います。実習前に困って教材の本を探しに来る学生、レポートを提出に来る学生、進路に悩み相談に来る学生、近況を報告に来る学生、研究室が丌在だと教員を探しに来る学生など多くの学生が訪ねて来ます。

私は大学を卒業し、そのままこの茨城キリスト教大学の保育実習指導室の仕事に就きました。社会人1年目、すぐに学生を指導する立場となりました。正直、学生と年齢があまり変わらないということで指導に欠ける部分があったと思います。ただ、一方で年齢が近いからこそ出来る指導があると信じ、これまでやってきました。目の前の学生にどうしたら理解してもらえるのか、単に答えを押しつけるのではなく時には問いかけ、時には共に考え悩みながら何度も何度も繰り返し学生と向き合ってきました。真剣に話せば気持ちが通じると信じ、始めは指導しているという気持ちで接していても、最後には応援する気持ちに変わっていることもしばしば。大学はそれまでの小中学校・高校とは違い自分で動いたり、自ら学んだりする姿勢が求められます。色々な事にチャレンジし、臆する事なく失敗する中で様々なことを感じ、次につなげていって欲しいと思います。また、その一方で責任も全て自身に返ってきます。それを分かってもらいたくて、時には厳しく指導したかもしれません。それは好きで注意したのではなく、目の前にいたあなたのためを思っての事だったのを理解して下さいね。応援しています。

実習というものは、本当に大きな力を秘めていると感じます。学生が実習を重ねるたびに、確実に成長していく姿を見て、陰ながら嬉しく、そして頼もしく思っていました。それまで話もしたことがなかった学生同士が実習を通して仲を深めていく様子、大いに泣き・大いに笑い・共に励まし合い壁が取り払われていく様子など、挙げれば限りがありません。習いたての手遊びをみんなで元気に試しながら歩いていたりする学生をよく目にします。そういった学生同士のつながりや、実習に向け懸命に頑張っている姿は、私の目にとても微笑ましく映りました。皆さん、そんな学生を見かけたらぜひ声をかけてみて下さい。喜んで手遊びでも何でも教えてくれるはずです。指導室でのつながりは同学年のつながりだけではありません。たまたま指導室を訪れた学生が、実習で役立った情報を後輩に伝えていたといった事もありました。学生同士のつながりは同学年だけでなく、学年を超えたかけがえのないものです。

私自身の大学生時代を振り返ってみても、テスト前友人と深夜までテスト勉強をしたり、自作の歌で小児栄養に出る必須アミノ酸を夢中で覚えたり・・・。そんな学生生活の思い出の中には常に人の笑顔があったように思います。実習で感じるように人の笑顔はいくつになっても嬉しいものです。そういった学生同士のつながりの中で感じた事、考えた事を次の世代へと伝えていって下さい。人の輪がどんどん広がっていくはずです。保育実習指導室の職員は学生の頑張りを応援しています。困ったことがあれば指導室をどんどん活用してもらいたいと思います。力になれるはずです。

最後になりましたが、このような貴重な場をもうけて下さいました教職員の皆様に心より感謝いたします。今後の皆様のご健康と益々のご活躍を心よりお祈り申し上げます。ありがとうございました。

白澤美保さんより

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私は、この大学を卒業してすぐに保育実習指導室に就職しました。最初は、あまり年の変わらない学生との対応はどのようにしたらいいのか戸惑いました。しかし、学生はとても明るく素直ですぐに打ち解けられるようになりました。

一人ひとり目標に向かい指導室で本を見ている姿、実習ではどんなことをしたら良いかと熱心に質問してくる姿がとても印象的でした。「実習はどうだった?」と質問するとそれぞれ個々に感じた実習体験を生き生きと話してくれました。そんな学生の姿を見て、将来保育士や幼稚園教諭になったとき実習を生かして子どもたちと関わっていけるだろうと感じました。

1年間という短い間で私にできることはほんのわずかしかなく、多くの方にご迷惑をおかけしてしまったと思いますが、先生方や学生にあたたかく接していただいたことをとても嬉しく思っています。これからも皆様のご健康とご活躍をお祈りしています。一年間本当にありがとうございました。

――お二人の後を引き継ぐ河野玲子さんは、まさにこの「空間と時間」で育ったフレッシュな卒業生。経験を積むのはこれからですが、学生の立場を知りつくしています。幼児保育の助手は、実習の手続きや作法を、懇切に、またときには厳しく指導する役目をもっています。しかし、それだけではありません。学生の悩みを知っていて、一緒に模索しながら相談に乗る、そんな役割も果たします。河野さんは、きっと学生にとって親身な、すばらしい「サポーター」に育ってくださるでしょう。

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新任の河野玲子さんより

石川さん、白澤さんには、学生時代から大変お世話になりました。また、お忙しい中、丁寧な引継ぎをありがとうございました。幼児保育専攻第一回卒業生の保育実習教務助手として、お二人のように、学生と共に悩み、考え、少しでも不安を和らげることが出来るよう努めていこうと思います。至らぬことが多く、教職員の皆様方にはご迷惑をおかけしますが、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い致します。
 

 

保育実習のひとこま

――漆器を作るとき、何度も重ね塗りするように、重層的な実習と多角的な学びは、人間に幅と深みを与えます。そんな《教養》を身につけた人こそ、子どもたちにまっすぐに向き合い、成長の手助けができる、真の「プロフェッショナル」の有資格者です。次の画像の数々は、飛田隆先生提供の、実習現場の様子と実習日誌の一部です。


(クリックすると拡大します)

 

――最後に、保育士課程が2年間でなく、4年間であることの意味を、幼児保育専攻の開設に深く関わった、畠山祥正先生に伺ってみました。

保育士課程が4年間であることの意味

教員 畠山 祥正

2004年4月児童教育学科に幼児保育専攻ができて2専攻になり、2008年3月最初の卒業生を出すことができました。

幼児保育専攻の計画が具体化したのは2002年のことです。2004年4月入学生を迎える2年前のことでした。当時はまだ短期大学や専修学校などでの保育士資格取得が一般的でした。(保育士資格は、大学に2年以上在籍(短期大学は卒業)し、都道府県単位で行われる試験に合格すれば得られますが、これは、すでに別な資格を持っている人や同時にめざしている人が仕事の幅を広げるために取得するものであり、試験で単独に取得してすぐに「使える」と考えるのは現実的ではありません。)

大学(4年制)での保育士養成は、本学が保育士課程を検討し始めた2002年は63校、1年目の2004年には本学を含め85校でした。それがすでに100校を越え、養成校全体の25%以上が大学になっています。

これは、予想以上に早い動きですが、そうなった事情の主たる理由を端的にいえば、求められている「学ぶべき内容と時間」が、2年では短すぎ3年間でやっとだからです。乳児や障害児への対応、地域の子育て家庭に対する相談・助言等も求められています。時代の要請に応えるべく、学ぶ必要がある内容は確実に増えてきています。

それでは、「4年間で学ぶ」意味とは何でしょうか。

本学の保育士養成課程での学びを時間的な流れで見ると、2年次に「保育実習ⅠA」(5月に保育所)と「保育実習ⅠB」(9月に児童養護施設など保育所以外の施設)、3年次に「保育実習Ⅱ」(保育所)または「保育実習Ⅲ」(保育所以外の施設)を選択して行っています。さらに、3年次の終わりには幼稚園実習もあります。実習を早めに行う理由は、保育実習ⅠAで保育所保育士の仕事内容を知ったうえで、ⅠBの施設実習を行い、2年次後期の授業での学びにつなげ、この学びを3年次の実習に生かして実習の深まりを期待するからです。

そして、4年次では、ボランティアとして保育施設に出かけて実践面を磨き、理論的な部分もしっかり学ぶことが求められています。この一見贅沢に見える一年は大きな意味をもっています。

ひとつは、「考える保育士」です。日々の保育の中で、さまざまな背景を持つ子どもたちに出会うはずです。子どもたちひとりひとりの生活や家庭の背景を考慮したきめ細かい保育を行うためには、決まったことができるだけではなく、自分で考える力をつけることが必要だと思われます。自らの学びの質を高めていくことが期待されます。

もうひとつは、保育士という資格をどういった仕事に生かすかを冷静に考える期間でもあるということです。これはたんに就職活動に余裕があるという意味ではありません。保育士が働く場は実に多様です。年齢的にも乳児から学齢前までの幅があります。かかわる年齢層の幅、施設の性格の違いをよく理解し、たとえばボランティア活動を通して自分の適性をよく考えて仕事先を決めてほしいのです。資格取得は必要とされる最低限の知識と技能の修得の証明であり、個々の仕事内容に応じてさらに学ぶ必要があります。4年次での学びの時を大切にしてほしいと願っています。    

 

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